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2008-10-17 00:00
永田町でささやかれる「小沢自爆」説
杉浦 正章
政治評論家
「麻生首相はクレー射撃の名人、引き金に手がかかるところまで来ている」と、自民党選挙対策委員長・古賀誠が16日いみじくも述べたが、まさに一触即発の状態で政局は推移している。話し合い解散提示に始まる民主党の柔軟路線が奏功して、政局ははナイヤガラ瀑布のように11月末投開票の滝壺に向かって流れを速めている。そこで問題になるのが、もし民主党が過半数を制したときに代表・小沢一郎が本気で首相に就任するかどうかである。幹事長・鳩山由紀夫は「必ず引き受ける」と断言するが、選挙区変更などなお微妙で解せない要素があるような気がしてならない。
最近になっても鳩山は「小沢代表の選挙区は(地元の)岩手4区ではないことだけは、確信を持って申し上げたい。東京になるか、神奈川になるか。どこになるかは小沢一郎のみが知っている」と述べて、国替えすることを断言している。政治家が、安泰な自らの選挙区を捨て、あえて落下傘候補として東京か神奈川の激戦区を選択する。その理由は「全党員に党首自ら先頭に立って戦っていることを示して、奮起を促す」(鳩山)とのことだが、党員に奮起を促すだけなら、べつに“危険地帯”に足を踏み入れる必要はない。おまけに小沢が自分の選挙にかかりっきりになっては、他の候補の応援もままならなくなる。
そこで永田町でささやかれ始めたのが「小沢自爆説」である。その内容は、(1)小沢には心臓病の問題があり、本会議や予算委出席の激務に耐えられない、(2)それは本人が一番知っており、本当は首相をやりたくない、(3)しかし、それを公言しては、民主党の選挙を危うくする、(4)したがって、激戦区で自爆して落選する、(5)小沢は、民主党のため先頭に立って戦った“英雄”として、世間の評価が定まる、(6)しかし、首相の座には座れない、というものである。この情報が流れたとたんに、代表代行・菅直人や鳩山がそわそわしはじめた、という“落ち”までついている。
さすがに鳩山は懸命の打ち消しに出ている。鳩山は何度も小沢本人に「もうここまで来たら逃げられません。好きとか嫌いという話じゃない。首相をやって死んでいただきます」と説得したという。「小沢さんは、首相を必ずやる」とも述べ、小沢が首相就任を避けるとの見方を否定した。しかしこの小沢に言ったという「もう逃げられません」という鳩山発言から見る限り、小沢は首相就任問題で悩んで、逃げたい心境であることだけは、浮かび上がってくる。語るに落ちたということだろう。鳩山は「小沢さんは無理を覚悟した上で、首相を引き受ける」とも述べているが、はたして本当にそうなのか、疑問が残る。国替えをどうしてもやるという一種の“異常行動”が、永田町常識からあまりにもかけ離れるからだ。いずれにせよ、もうじき分かることだが。
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