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2008-10-29 00:00
日中平和友好条約締結30周年を迎えて思う
鍋嶋 敬三
評論家
麻生太郎首相が日中平和友好条約締結30周年を記念して10月23日北京で開かれたレセプションで日中「共益」の重要性と、互いに切磋琢磨して協力することが真の「戦略的互恵関係」だと呼び掛けた。「引っ越しのできない隣人」である両国の関係について、首相は過去を謙虚に振り返り、共に未来を築いていくのが使命だと表明した。日中首脳会談では金融危機に直面する世界経済の安定と繁栄のため、両国が国際的取り決めに貢献することで合意した。日中双方に困難な問題を共に解決するという共通の認識と努力が求められる。
条約交渉は妥結まで4年近くを費やした。中ソ対立が絡み「反覇権条項」を巡って難航したのだった。第2条の「日中共に覇権を求めず」に加えて「第三国との関係に影響を及ぼさない」という第4条を入れることで決着した。この「第三国条項」によって「日本は外交のフリーハンドを確保した」と事務レベル交渉の責任者だった当時の中江要介アジア局長は調印直後の講演で述懐している。そして条約の一番の意味は「日中相争わず」というところにあると指摘していた。中国と再び戦わないようにしておかないと「日本の平和と繁栄は確保できない」というのが中江氏の考えであった。
この30年間の日中関係の変化は目を見張るものがある。両国間の貿易総額は50倍に飛躍、2007年には2367億ドルで初めて日米貿易を225億ドル上回った。中国はアジア欧州会議(ASEM)首脳会合や北朝鮮の核を巡る6カ国協議の議長国を務めるなど多国間外交を積極的に推進している。しかし、急速な経済成長を遂げる中国が直面する課題も大きい。経済格差の拡大、環境破壊、共産党や政府の幹部の腐敗が深刻で、国民の不満が高まり、社会の不安定化を招いている。軍事費は20年間連続二桁の伸びを続け、アジアの安全保障環境を脅かしている。日中関係も、歴史問題を背景に中国指導部が推進してきた愛国教育によって、しばしば反日気運が高められ、緊張を繰り返してきた。
内閣府の外交に関する世論調査(2007年10月実施)では、中国に「親しみを感じる」(肯定派)が34.0%に対して「親しみを感じない」(否定派)が63.5%と大差がついた。30年前の条約締結時には肯定派が62.1%で、否定派は25.6%だったのが、完全に逆転した。1995年には肩を並べ、日中関係が険悪になった小泉純一郎内閣当時の2003年に否定派が優勢になり、激しい反日デモがあった2005年にはついに63%を超えるに至った。この傾向は安倍晋三、福田康夫両内閣で関係が改善してからも変わっていない。歴史問題を対日外交のてことしていつでも使えるようにしている中国への不信感と、軍事的膨張への警戒感が、国民の中にあるからにほかならない。
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