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2008-10-31 00:00
最大の問題は「霞ヶ関症候群」への対応だ
杉浦 正章
政治評論家
政界が固唾を呑んで見守った首相・麻生太郎による30日の記者会見のポイントは、解散延期を予想されたほど強く打ち出さずに、第2次補正予算が成立するかどうかを見極めた上で考えるという立場を鮮明にさせたことだ。解散へのフリーハンドを維持した形だが、果たして朝日、毎日、読売の全国紙すべてが31日の社説で要求しているように、年末か年始の解散に踏み切れるだろうか。金融危機の動向、自民党の選挙情勢が好転するかどうか、国会運営など複雑な様相が絡むが、おそらく麻生自身は4月以降に先延ばしせざるを得ないと思っているのだろう。麻生が記者会見で「追加景気対策のための第二次補正が国会で通るか通らないか、国会を見た上で判断するという問題がある」と述べた狙いは、どこにあるのだろうか。
第一には、党内的に解散が遠のくというムードが生じて選挙活動にたるみが出ないように引き締め効果を狙ったものだろう。次に、民主党に対するけん制の意味合いがある。景気対策に反対するなら、それをテーマに解散するという構えだ。加えて早期解散を主張してきた公明党への配慮がある。恐らく代表・太田昭宏との会談で表現まで詳細に詰めた上での発言だろう。しかし、実際に早期解散に踏み切れるかというと、話は別だ。金科玉条にしている金融危機はそう簡単にはおさまるまい。金融危機対策に密接にかかわる来年度予算案の編成も重要だ。臨時国会も延長なしに第2次補正予算案が通過する雰囲気とは思えない。12月には麻生の呼びかけた日・中・韓首脳会議もある。ASEAN首脳会議も予定されており、アジアの金融危機対策として欠かせない会議だ。最重要のポイントは、追加経済対策で支持率が好転するかどうかだ。
総事業規模26兆9000億円の追加経済対策についての国民の反応は、総じて良好なものがある。とりわけ高速道路のどこまで行っても千円の評判がいい。政治が久しぶりに発信した夢のある話題である。しかし、これが内閣支持率を急上昇させ、地滑りのように離れた自民党支持基盤の回復に直結するかというと、話は別である。せいぜい支持率の若干の回復か下落を抑えた程度にとどまるだろう。消費税の導入に言及したのも、野党のマイナス宣伝に引っかかりやすい。経済対策は、自民党支持基盤を上滑りする可能性が高い。したがって、自民党が支持基盤を失った最大の問題にメスを入れない限り、選挙対策にはなりにくい。それは厚労省、社会保険庁の醜態が象徴する「霞ヶ関症候群」への対応である。問題は厚労相・舛添要一が後期高齢者医療制度抜本改革の食言で与野党の信頼を失ったことである。もともとタレント性のある舌先三寸型政治家と思っていたが、舛添では改革は困難だろう。
むしろここは、首相官邸が主導して霞ヶ関改革を断行するしかない。それには少なくとも半年は必要だろう。こうした状況からみて、金融危機は長期化するし、態勢立て直しには時間がかかる。金融危機対策には、来年度予算の早期成立も不可欠である。総選挙で政治空白を1か月つくって暫定予算を組むようでは、市場の反応がマイナスに動く。麻生にとって早期解散が得策か、来年4月以降が得策かは、全くの賭けだ。しかし、前の2政権と比べて有利な点も多い。それは麻生の明るさと、スピード感のある経済対策である。首相官邸からの発信は、一変した感がある。この政治姿勢を維持して霞ヶ関改革を断行し、通常国会を乗り切れば、じわじわと支持基盤も回復する可能性が大きい。年末年始解散では時間不足で、まず与党の過半数は維持できまい。国際金融危機の乗り切りも、解散先送りの“大義”である
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