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2008-11-17 00:00
(連載)あるアラブ人がオバマを支持する理由(2)
本条 有樹
研究員
悲しいかな、我々アラブ人は、人種主義の典型です。湾岸域の外国人(労働者)をごらんなさい。彼等には何の権利もありません。彼等の声をきいてごらんなさい。一部屋に20人押しこまれているが、個室とは言わない。せめて10人一部屋にして欲しいと言っています。家畜のようにトラックで運搬しないで、バスで輸送して欲しいと言っているのです。我々は人種主義の典型です。オバマはアラブ諸国に必ずや改革を求めるでしょう。まず〝保証人〟制度の廃止です。そしてその次が権利の保障です。黒人だけではなく、アラブ人自身そして白人にも権利を認めなければなりません。アラブ世界では白人が侮辱されています。〝神聖〟な市民権を持たなければ、侮辱されるのです。オバマにアメリカ・モデルの平等、権利、機会均等の原則導入をアラブ諸国全部に押しつけて貰いたい」
ここでアトワン発言の引用は終わるが、最後の「オバマにアメリカ・モデルの平等、権利、機会均等の原則導入をアラブ諸国全部に押しつけて貰いたい」という一節は、アトワンが単なる反米・反イスラエルだけの輩ではないことを如実に語っている。私の見るところ、アトワンの思考には独自の「正義」という座標軸がある。その意味で、アトワンはアラブ世界の論理だけに埋没する国粋主義者ではなく、普遍的「正義」に目を向けた国際人である。「正義」にもとる国はどこであれ批判されるべきなのである。「インティファーダ」とは本来アラビア語で「振り払う」や「取り除く」を意味するが、地球上どこの国であれ、そこに「不正義」がある限り、その「不正義」は「取り除かれる」べきなのだ。アトワンにとって「インティファーダ」は世界のどの国でも展開できる運動である。そして、オバマは米国での「インティファーダ」を成功させたのだ。
欧米人、そして彼らと多くの価値観を共有する日本人は、とかく欧米世界とアラブ・イスラム世界は未来永劫闘いつづける宿命にあると考えがちであるが、アラブ世界にもアトワンのようなアラブ人がいることを知ることは、われわれを未来に向けて勇気づけてくれる発見である。アトワンはアラブ的な旋律で普遍的な「正義」を語っている。しかし彼はアメリカ的な旋律を排除しようとはしていない。むしろその旋律をオバマに高らかに謳わせ、アラブにとくと聴かせるよう要求している。いかなる旋律であれその伝えようとする「正義」は相通じる。アトワンはそう信じて疑わないのだ。オバマ大統領の誕生により、多くの「アトワン主義者」がアラブに現れることに期待したい。そして同時に我々もアラブの旋律に注意深く耳を傾けることが求められている。(おわり)
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