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2008-11-20 00:00
元厚生次官殺害事件について思う
玉木 洋
大学教授
元厚生次官2人が狙われ、1組の夫婦が殺害されたことはまことにいたましい。現時点で年金関係高級官僚を狙ったテロかどうかは確認されてはいないが、おそらくそうなのであろう。確かに、社会保険の運用こそが業務内容である社会保険庁が、その業務の中核である年金事務を極めてずさんに実施していたことは、許しがたいことであろう。そして厚生事務次官、社会保険庁長官といったポストに就いたものが、それに一定の責任を有することも確かである。しかし、それは元社会保険庁長官、元厚生事務次官、元年金局長(元年金課長)が、その時点でその立場でなしうる最善をなしても発生したかもしれないことかもしれず、少なくとも積極的に原因を作って生じた悪事ということでは全くない。彼ら個人が憎むべき悪人であるとか、天誅を下される対象ということでは全くない。
むしろ、あえていうならば、真に責任があるのは、日ごろ高級官僚を強烈に批判するマスコミが好意的な労働組合労働者であるのかもしれない。実際、雇用を保証されている出先の現場の公務員労働者の一部(組合活動家等)には、親方日の丸意識が強く、政策決定等で政治家や世論の批判の矢面に立つこともないまま、公益実現や公務の目的遂行よりも、労働者としての権利主張に熱心な者も多いと言われている。そういった勢力によってコンピュータ導入が阻まれたことが、今日の年金に関する大きな多数のミスの原因になっているとも言われる。他方で、マスコミの大勢も、厚生官僚、特にキャリア官僚への批判、厚生高級官僚は悪人というイメージを植え付けるような報道を続けてきた面があるのではないか。
そのようなことが、より良い年金制度のために努力してきた善良な高級官僚を殺人の被害者とするような今回の事件につながった可能性はないのだろうか。もちろん直接の因果関係の証明はほとんど不可能であろう。しかし、トヨタの奥田氏の数日前の指摘もあったように、事情を知る識者の間では、日ごろからのマスコミの過剰な攻撃が、報道に接する国民に誤った認識や誤った感情を生じさせる懸念は、かなり広くもたれていたと思われる。そういった可能性も念頭に置きつつ、マスコミ報道が、冷静に、事実に基づき、歪みなく、公平かつ論理的なものとなるように、マスコミ人自身が考えるきっかけに、今回の事件を生かしてもらいたい。
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