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2008-12-07 00:00
政治家は「内需喚起」のメッセージを発せよ
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
好天にも恵まれた京都で、たっぷり紅葉を楽しんできた。地元の人に聞いても近年になく鮮やかな紅葉だということで、先の週末は永観堂、曼殊院をはじめ、紅葉の名所と言われるほどの場所には、観光客が溢れかえった。未曾有の経済危機だ、景気はどん底だ、というのが本当かいな、というほどの賑わいである。昼食時のあの南禅寺の湯どうふ屋さんなどは、行列が何十人。やたらに暗い新聞記事を読みつけている身には、一寸ほっとした気分である。もっとも「一部富裕層」だけの現象だ、という人もいるだろう。全くそれと縁のない筆者ではあるのだが。まさか観光庁設置が早速効果を現したのでもあるまい。
紅葉酒に浮かれた気分で書いている訳でもないが、とにかく明るい話題が欲しい。今は夜でもじき朝が来るよ、というのは嘘ではないからだ。「全治3年」と威勢が良く、形にとらわれない国会討論で、一時は期待さえ持った麻生首相だが(9.30「施政方針演説」)、いつかゴミ箱をのぞいて回った首相を彷彿とさせる現場視察にあけくれていらっしゃるようで、とんと身の不明を恥じることになっている。毎度の繰り返しで気がひけるが、なぜ思い切った内需喚起のメッセージを発することが出来ないのか。ことは与党だけの話ではない。民主党が次の選挙に勝たない限り2年から5年は続く「ねじれ」をなんとかするためにも、目の覚めるようなメッセージを民主党に期待しているのだが、これもまたなんとも切れ味が悪い、としか申し上げようがない。
合成の誤謬、という表現がある。部分的には大正解でも、総合すれば間違った方向に進んでしまう、という話だ。民主党が火をつけ、自民党や有識者の皆さんが衆知を集めて、お役所のタクシー券やレクリエーション費用に鉈を振るうのは結構。大いにやってもらわねば困る。構想日本を中心とした「事業仕分け」(http://www.kosonippon.org/temp/0811shiwakesetsumei.pdf)もとても大事な作業だ。しかし、例えばそこで浮いてきたオカネを当面何に使うか、どのように前向きに経済を活性化させるために使うか、という知恵なしでは、万全とは言えまい。官僚主義や予算主義のアラだけを捜すのではなく、そうしたシステムに全く不向きな仕事は、民間の非営利組織に委せてはどうか、という私の年来の主張と軌を一にする。
必要ならば陰々滅々としたメッセージを発するのも厭わない、というのも政治の努めだ(11.19「与謝野大臣」)。しかしその前提としての明るい未来に希望を持たせるのがいかに大事かは、今回の米国大統領選挙でのオバマのメッセージを見れば明らかだ。内需拡大に名を藉りた無駄遣いやバラ撒きを戒めるのは基本中の基本だ。しかし、そのタガをはめた上で、何を提案できるかにこそ、政治の、政治家の真価が問われるというものだろう。
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