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2009-01-06 00:00
(連載)多極化する世界と多党化する日本(1)
角田 勝彦
団体役員・元大使
2008年は、危機と混迷、秩序崩壊の年として記憶されよう。グリンスパーン前米連邦準備理事会(FRB)議長が「百年に一度か、五十年に一度の事態」(『波乱の時代』2008年9月)と記した昨秋の金融危機に端を発したものであり、経済不況はツナミ的に全世界に広がりを見せている。2008年は証券にとって大恐慌以来の最悪の年で、1年で世界の株式市場の時価総額は29兆ドル強が消失し、年末には31兆ドル強に、ほぼ半減した。米国自動車産業危機に象徴されるように、実体経済も痛手を受け、失業者増大が大きな問題になっている。原油など資源価格も急落した。
経済だけではない。イラク戦争の不手際もあり、1989年のソ連・東欧圏崩壊後唯一の超大国となった米国の権威は地に堕ちた。米国が唱道した市場経済(とくに新自由主義)への疑問のみならず、米国単極化(とくにネオコンの単独行動主義)の限界を主張する声が、米国の内外で強くなった。ブッシュ(父)大統領が、1991年に呼びかけた「新世界秩序」構想(冷戦時の「パクス・ルッソ・アメリカーナ」に代わり、米国の価値観を広く世界に通用させた新たな世界秩序構想)は決定的打撃を受けた。一部途上国をも含む、世界の多極化や無極化の時代の到来が、多くの論者により示唆されている。
日本国内においては、予想以上の株安(2008年だけで、東証の時価総額が日本GDPの約4割に当たる200兆円減少した)に始まり、円高による輸出不振、景気後退による失業者増大、さらに食の安全への不安や公的年金の混乱から政治(とくに安倍・福田と二度突然の首相交代があった自民党)への不信が高まっている。与謝野経済財政相は、最近、2009年を「耐えて、底抜けしないよう努力しなければならない年」と規定したが、民間シンクタンク12社による2009年度の実質経済成長率の予測の平均は、計75兆円規模の経済対策の効果を含めても、対前年度比0.9%減である。
「政局より政策」というのは、筆者がかねて本欄で説いてきたところで、総選挙の早期実施にはなお問題があるが、麻生内閣の支持率がこの間低落してきたのも事実である。日本経済新聞社とテレビ東京が昨年末共同で行った世論調査で、麻生内閣の支持率は21%となり、11月の前回調査から10ポイント低下、政権維持の危険水域とされる30%を大きく割り込んだ(不支持率は73%で11ポイント上昇した)。政治の世界は「一寸先は闇」というが、この分では、遅くとも9月までに実施される次期総選挙で、自民党を中心とする現与党が政権を維持するのは困難であろう。民主党の単独政権獲得も疑問である。多党化と混迷が予想される。
このような混迷の時代が、なぜ生じているのであろうか。筆者は、2006年10月の本欄への投稿「近未来を考える(ニュールネサンスからメタモダンへ)」で論じたように、1960年代から世界で数百年に一度の大変容(ニュールネサンス)が生じており、それも冷戦終焉以降すでに後期に入っていると認識している。基本は、近・現代の基礎となったウェストファリア体制の変更(国家主権の不平等化と内政干渉容認へ)および資本主義体制の変化(知本主義へ)であり、イラク戦争など(いわば新しい三十年戦争)のあと、遠くない将来に超現代(メタモダン)がやってくるとの考えを持っている。メタモダンの構図としては、これまでの人類の経験外の悪い未来(核戦争による人類の事実上の絶滅など)と良い未来(超科学技術によるエデンの園など)は別にして、権力構造から見ては、単極、多極、無極、分極が考えられる。(つづく)
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