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2009-02-13 07:57
小泉発言で麻生政権は一触即発の危機に
杉浦正章
政治評論家
第2次小泉劇場の幕が開いた。首相・麻生太郎を批判した元首相・小泉純一郎の発言のポイントは、定額給付金などの財源の裏付けとなる第2次補正予算の関連法案について、「3分の2を使ってでも成立させなければならない法案だとは思っていない」と述べたことの一点に尽きる。これにより衆院での再可決が不透明となり、否決されれば政治的には内閣不信任案可決と同様の効果を生じ得る。つまり内閣総辞職か衆院解散かだ。来週以降「給付金政局」が、ぶり返す流れだ。麻生内閣はまさに崖っぷちに立たされた形だ。
究極の失言である麻生発言は、「麻生おろし」が生じてもおかしくないと先に書いたが、その「麻生おろし」に直結しかねない発言が、首相経験者から飛び出した。久しぶりに激怒の表情をみせた小泉だが、その狙いはどこにあるのだろうか。早くも民主党代表代行・菅直人は、小泉人気による“自民党復活”を警戒してか、小泉が麻生を重要ポストに起用し続けたことに言及、「今になって麻生さんを『笑ってしまう』と言うのは、眼力のなさを笑われる。自ら恥じるべきだ」と小泉批判の口火を切った。「まさかの坂がある」という小泉が再登板となれば、一挙に自民党は劣勢を挽回し得る。世論調査でも党内的にも再登板待望論は多い。「引退宣言」をしていてそれができないとなれば、麻生よりはましな他の候補を擁立するかどうかだ。問題は、小泉発言がそこまでにらんでの発言なのかどうかだが、これが大きいポイントの一つだ。
もう一つのポイントは、小泉に本当に定額給付金法案の衆院再可決に反対し、小泉チルドレンらの動きを助長し続けるつもりがあるのかという点だ。自民、公明両党幹部は、来週中に法案の衆院再可決をめざす方針を決めているが、ここで造反が出れば、内閣は冒頭述べたように行き詰まる。ところが小泉は、明日14日から来週末20日までの日程で、ロシアの経済人らと会談のためモスクワを訪問する。肝心の時に不在だ。この日程を延期または縮小すれば、まさに政局意識だ。もっとも再可決が民主党の思惑で、再来週に引き延ばされる可能性もある。一方で小泉不在は若手の暴走を野放しにする可能性もある。再可決阻止に必要な16人以上の造反は、小泉発言で現実味を持ち始めたことは確かだ。小泉自身もこれだけの発言をした以上、少なくとも再可決の本会議を欠席をする可能性はある。
中川秀直の造反に続いて、小泉の「反麻生宣言」とあって、麻生擁護の元首相・森喜朗は一挙に窮地に追い込まれた。森は「小泉氏はどうせやめる人だ」と漏らしているが、その影響力をよく知っている。森は官房長官・河村建夫に対し、「頑張れるところまで、とことんやれ」と述べた。さすがに強気の森も「がんばれるところまで」と弱気にならざるを得ない側面を垣間見せた。 自民党執行部は党内引き締めに懸命だが、党内は「もう麻生では選挙はできない」とする空気が圧倒的であり、抑え切れるかどうかが問題だ。小泉が「総理の発言に信頼が置けなければ、選挙は戦えない」と述べたのも微妙に影響しそうだ。折からの経済危機で補正予算、本予算の早期成立が不可欠と良識に訴えて協力を求めることだけが頼みの綱だが、この情勢だと造反議員が出ることを避けるのは至難の業だろう。いずれにせよ政権は一触即発の危機にさらされることとなった。
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