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2009-02-16 07:56
政界裏舞台を浮き彫りにした小泉発言
杉浦正章
政治評論家
定額給付金関連法案の再議決への慎重論を明言した元首相・小泉純一郎発言に関して、永田町は百家争鳴の状況だ。さまざまな発言の中で良質な分析だけを選り分けると、2つに焦点が集まっていることが分かる。1つは、小泉がささやかれる疑惑の進展に、防御のバリヤーを設定しようとしたものだというもの。他の1つは、キングメーカー説だ。いずれも首相・麻生太郎との水面下での暗闘に根ざしているもののようだ。
バリヤー設定説は、政界裏情報通の元自民党幹事長・野中広務がTBS番組で述べたものだ。野中は、かんぽの宿をめぐる疑惑と小泉との関連をほのめかしつつ、「捜査当局も広い視野でどんなデザインで行われたか明らかにしなくてはならない。小泉はその捜査の結果を恐れたのではないか。ここで言わなくてもよい定額給付金までまで言うべきではないのに、そこまで言ったのは、この人がこれ以上自分の傷を深めないように、防御圏を引いたのだ」と言い切った。つまり小泉が自分に疑惑が降りかかる前に、「麻生おろし」をして、問題のうやむや化をはかろうとしているという見方だ。
野中がそこまで言ってしまったので背景を説明すると、麻生の郵政関連発言の真の狙いは、小泉ら改革派を追い込むためのもので、舌足らずであらぬ方向に進んでしまったという説がある。麻生は、かんぽの宿問題をはじめとする郵政民営化がらみの問題で、オリックスの会長・宮内義彦と小泉や竹中平蔵との関係について、何らかの情報を得ており、それを改革派追い込みの手段にしようとしているといわれる。宮内は、言うまでもなく小泉政権時代に総合規制改革会議の議長を務めており、小泉、竹中とは親密な間柄だ。野中は「この背景は何だったのかというと、日米構造協議の中から生まれ出た米金融業界のハゲタカが、日本を変えたいという構図の中で、利権が生まれ、人脈が生まれ、犯罪的な行為をやっている」と述べた。「犯罪行為」だとテレビで公言するのだから、よほどの確証を握っているのだろう。社民党党首の福島瑞穂に至っては、小泉を「共同正犯」とまで公言している。
他方、キングメーカー説は、民主党代表代行・菅直人の発言に象徴される。菅は、「小泉氏の得意技で、皆がびっくりするような人を後継首相に据えて、自分の手で自民党の人気を高めようとしている」との見方を示した。「びっくりするような人」とは小池百合子のことだ。小池百合子を首相にして、自分は引退すれば、民間人として、また一部にささやかれているように比例に回って当選すれば衆院議員として、内閣に「副総理」格で入閣して、「院政」を敷こうとしているというものだ。しかし小池は、党内で嫌われており、とても全党的な人気を得ることは難しいだろう。
いずれにせよ小泉発言は、永田町の裏面を浮き彫りにしているが、果たして本当に定額給付金の再可決拒否に動くかというと、側近らも含めて否定的だ。再可決拒否の動きも広がりそうもない。振り上げた拳はいまのところ反対投票でなく、“棄権”で対応するのではないか、とみられている。むしろ照準は予算成立後の「麻生おろし」を目指しているとする見方が強まっているが、モスクワの小泉と小泉側近らがどんな電話調整を進めているか、まだ漏れていない。
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