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2009-02-18 07:59
自民、「ポスト麻生」に向けて胎動
杉浦正章
政治評論家
「中川辞任劇」の露呈したものは、首相・麻生太郎の危機管理能力の欠如であった。これで内閣は「半死」状態となったと言っても過言ではない。自民党内の「麻生おろし」、総裁選前倒しの動きは加速するだろう。根源に麻生の手で解散か新総裁の手で解散かの負の選択を迫られる問題があるが、自民党内はいまや「麻生以外なら誰でもいい」(党幹部)という状態になりつつある。来年度予算成立後は「政局」となる公算が強い。
辞任劇のポイントは、麻生は「もうろう会見」を甘く見たうえに、その後の処理を誤ったのだ。盟友だからという私情を挟んでしまった。直ちに罷免すればまだましだったが、16日から17日にかけての迷走が、麻生の首相としての危機管理能力の弱さを見せつけた。最初の誤算は、中川の「薬を飲んだ」の釈明で乗り切れると踏んで、「体調管理して、職務に専念せよ」と“激励”したこと。続いて中川の「予算が衆院を通過してからの辞任」を認めた誤算。与党とりわけ公明党が辞任要求しないとみた誤算。問責決議案が可決されればどうなるか、の展望を描けない見通しのなさ。そして幹事長・細田博之、官房長官・河村建夫の補佐能力のなさも見事に露呈されてしまった。
いずれも、政治家としては初歩的な判断能力を問われた問題であった。この能力の欠如を露呈されて、自民党内が「ポスト麻生」に動かないことはまずあり得ない。先の小泉発言の「総理の発言に信頼が置けなければ、選挙は戦えない」という部分が生きてくるだろう。今後は「できるところまでやれ」と述べた森喜朗や、参院の長老・青木幹雄あたりが引導を渡すか、側近の菅義偉あたりが引け時の説得をするか、などの動きが注目されよう。森も事態が自分の末期とそっくりになってきて、恐らく支えをどういう形で外すか、苦慮しているのではないか。麻生が中央突破で解散に走る可能性も十分あるから、予断を許さないことも確かだが。
そこでポスト麻生の候補はどうかというと、麻生が最後の切り札だっただけに、これといった本命がない。首相としての適性よりも、政権を失った場合の「野党党首」としての適性を考えて選考した方がいいかもしれない。誰がなっても自民惨敗の流れを押しとどめることは困難だからだ。しかし「選挙管理内閣」としての性格もあり、その場合は与謝野馨が浮上してくるかも知れない。昨年12月に「与謝野選挙管理内閣」説をスクープしたときには、可能性は0.5%と書いたが、こうなってくると3.4%くらいになったかも知れない。土井たか子が社会党を率いたイメージで行けば、野田聖子だろう。野田なら結構票を取るかも知れない。小池百合子は人望がない。元外相・高村正彦も渋くて信頼性があるが、いささか地味すぎる。舛添要一説は党内に敵も多く、まとまりにくい。しょせん参院議員では無理だろう。まさか3人続けて失敗した“キングメーカー”森が、4人目のキングメーカーを目指して町村信孝を担ぐことはあるまいと思うが。いずれにせよ予算成立までが紆余曲折、麻生の手で解散の可能性もあり、これに「ポスト麻生」が絡むのだから複雑きわまりない展開だ。いまから断定的に予想できるのは3流評論家と週刊誌だけだ。
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