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2009-02-25 08:00
「小手先改造」では事態打開できぬ
杉浦正章
政治評論家
貧すれば鈍すると言うが、首相・麻生太郎は本当に側近に恵まれていない。「大トラ大臣」に次いで、「政局音痴大臣」の登場である。行政改革担当相・甘利明が「与謝野大臣の兼務をいずれ解かなければならず、そのときは『ミニ改造』の規模を大胆なものにするのは、1つの選択肢だ」と大幅改造論を唱えた。いま「読むべき空気」は「首相退陣」の流れであり、「小手先改造」などではないことが分かっていない。逆に、この発言から見ると、麻生側近らの間では「改造」程度しか事態打開策がないことを証明したことになる。
元首相・中曽根康弘が8日に改造論を唱えたときは、さすがの“大勲位”も「老いたな」と思った。ところが、側近の官房副長官・鴻池祥肇が16日、首相・麻生太郎に「中曽根さんも言っている」と改造を進言、麻生はその際はさすがに否定している。また飛び出した甘利の改造論は、与謝野馨の3大臣兼務を解くために差し替え人事をしなければならないことを利用して、大幅改造に持ち込もうというものだ。党内の反響は総じて総スカンだ。テレビなら何にでも出たがる山本一太が大幅改造論を唱えた他は、「ツバメやスズメがチュンチュン言いよる」(総務会長・笹川 堯)、「ポジションが弱い総理が改造をやると命取り」(元幹事長・加藤紘一)と散々だ。参院国対委員長・鈴木政二に至っては「一閣僚がとやかく言う話ではない」と言い切った。
加えて甘利の改造構想には政治日程上の重大な欠陥がある。というのも、当の与謝野は22日のNHKで「先発投手が倒れてどこまで投げるかだが、最低限でも予算成立関連法案衆参通過まで答弁者として続けていくことが正しい」と述べ、予算関連法案が成立するとみられる4月末まで担当することを表明している。4月末ともなれば「麻生おろし」は佳境に入るか、もう事実上おろされている状況かも知れない。そのような時点で麻生に大幅改造の余力があるかというと、まず無いとみるのが常識だ。おまけに人材が集まるまい。選挙のポスターですら麻生の写真を嫌がる雰囲気の中で、沈む泥舟に乗るのはよほどの大臣病患者しかいないだろう。
麻生自身も米国で「いまの時点で内閣改造は考えていない」と否定している。麻生側近らの意識の根底には、何とか麻生の手で解散を断行できないかという思惑がある。そのために改造を断行して、求心力を回復させたうえで解散、という苦肉の策を描いているのだろうが、政局の理解が根幹で間違っている。民主党代表・小沢一郎がせせら笑って述べているように、「早く辞めろという国民が7割以上いるのに、そういうレベルの問題ではない」のだ。自民党内の動きは麻生に解散に持ち込まれては困るからこそ生じているのである。苦し紛れの悪あがきは、政権の断末魔をみるようである。
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