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2009-03-02 07:53
「麻生解散」か、「麻生降ろし」か、で百鬼夜行の政界、言論界
杉浦正章
政治評論家
総選挙の自民党大敗につながる「麻生解散」を野党と朝日新聞が主張すれば、少しでも挽回を狙う「麻生降ろし」が自民党内で始まる。この「麻生解散」と「麻生降ろし」の綱引きが政局の構図となった。帰趨は全くの互角で予断を許さない。「麻生の手に寄る解散論」は「党利党略」「個利個略」「社利社略」の三方面から出されている。民主党代表・小沢一郎が「総選挙で国民の審判を仰ぐとき」と主張し、野党が一致して早期解散を狙う背景には、支持率1けた台寸前にまで追い込んだ首相・麻生太郎の手に寄る解散を何が何でも“達成”しようという野党の「党利党略」がある。
圧勝できると踏んでいるからだ。奇妙なことに政権の少しでも延命を図ろうとする麻生も、自らの手に寄る解散を目指しており、野党側と一致している。総務会長・笹川堯も「首相は絶対に辞めない」と自発的退陣を否定している。麻生は「麻生降ろし」が本格化すれば解散に突入する構えすらみせている。「破れかぶれ解散」だ。これはまさに麻生の「個利個略」だ。注目すべきは、これに加えて朝日、毎日、日経など全国紙の「麻生の手による解散」論だ。とりわけ朝日は、社説だけでなく一般記事にも反映させている。まず27日付け社説で「麻生首相へ、改めて早期解散を求める」と長文の社説を掲げ、「一日も早く解散に踏み切れ」と主張、「麻生降ろし」の動きに対して「選挙前に党首を替えるなら、野党民主党に政権を譲り、下野して、国民の信を問え」と真っ向から反対している。
朝日は、元首相・小泉純一郎の麻生批判が出て来たころから、「麻生降ろし」をけん制する紙面づくりに徹している。小泉劇場の再来や、総裁選挙で、自民党が息を吹き返すのをけん制するかのようだ。2月19日にはわざわざ47都道府県の自民党幹事長へのアンケートを実施し、「『総選挙は現政権で』が30都道府県だ」と、麻生降ろしにまず水をかけた。際だったのは、2009年度予算が衆院を通過した28日朝刊で、読売が「うごめく麻生降ろし」、NHKが「麻生総理大臣の退陣を求める声が公然と出ている」と「麻生降ろし」の動きを前向きに伝えているのに対し、朝日は「麻生降ろし上滑り」と、逆の見出しをつけている。こうした編集方針は、同紙の「水に落ちた犬は打て」戦略にのっとったものに違いない。つまり、不偏不党を標ぼうした綱領とは裏腹に、反自民色の強い同紙としては、自民党が新総裁の手による解散で、麻生で失った失地を挽回させては困るのであろう。まさに「社利社略」の編集と受け止められるのである。
これに対し「麻生降ろし」側は、元幹事長・武部勤が麻生の自主的退陣を促し、これに元幹事長・中川秀直が同調している。自民党内は圧倒的に「麻生では選挙ができない」という空気だ。問題は後継者だが、去る18日に元首相・森喜朗、前参院議員会長・青木幹雄、読売新聞グループ本社会長・渡辺恒雄らが集まった際には、与謝野馨と舛添要一の名前が挙がったようだ。舛添は“当て馬”的な挙がり方だったようで、与謝野が真剣味をもって語られたようだ。今後週に1回失言を繰り返す状況の麻生が、また病的に失言を繰り返し、支持率はまず1けた台になるものとみられる。野党や朝日の意図と反して「麻生降ろし」の動きは加速せざるを得ない状況だろう。武部や中川秀直レベルでは役者不足でどうにもならないが、森や青木が「引導渡し」に動くかどうかがカギでもある。これを虎視眈々と狙っているのが小沢で、最近では参院での問責決議案より、衆院に首相不信任案を提出して、自民党内反麻生勢力に「踏み絵」を迫る動きも見せている。まさに政界、言論界を巻き込んだ百鬼夜行の構図が出来上がってきているのが実情である。
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