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2009-03-12 08:00
麻生に移りつつある「解散」主導権
杉浦正章
政治評論家
民主党に対する絶好の反転攻勢材料が「西松建設疑惑」であるのに、首相・麻生太郎はきっかけをつかみかねているようである。しかし民主党代表・小沢一郎の進退が窮まってきたことで、政局主導権はじりじりと麻生サイドに移りつつある。解散に追い込むという民主党側の勢いがそがれ、事実上麻生がフリーハンドを握りつつある形となったからだ。自民党内の「麻生降ろし」も失速気味だ。こうした中で自民党内では、政権浮揚のための「テポドン撃墜効果」がささやかれ始めているが、超ど級の安全保障上の決断を麻生が本当に下せるか、というと疑わしい。大局から見た政治の構図は、小沢が政権を目前にしたここぞという場面で、高転びに転んで、民主党の身動きがとれなくなった形だ。
麻生内閣不信任案を提出すると息巻いていた国対委員長・山岡賢次も、献金を受け取って、西松疑惑に“参加”しており、姿をなかなか見せない。民主党の攻撃力は一挙にそがれた形だ。絶対外れないトラバサミにかかった小沢が辞任し、清新な副代表・岡田克也にクビをすげ替えるにしても、一挙には行くまい。時間がかかるのである。この間、民主党が国会で何を主張しても、これまでの勢いは回復出来ないだろう。小沢が秘書の起訴で3月末に辞任した場合、後任を決めて態勢を建て直すまでには1カ月はかかる。そうするともう会期末だ。一方麻生は、予算案が成立すれば、景気悪化に対処する1次補正予算を国会に提出するだろう。一部で予算を提出したうえで国民に信を問うという見方があるが、西松疑惑は自民党に同補正予算を成立させる余裕をもたらしたような気がする。したがって、解散のチャンスは補正成立後の会期末から任期満了までという構図が生じている。
西松疑惑が民主党を混乱させている最中の解散も考えられなくはないが、麻生人気が低迷していて難しい。いずれにせよ西松疑惑は、麻生政権にとって「追い込まれ解散」という図式を取り払ったともいえる。以前に比べれば解散のフリーハンドを握りつつあるということになる。自民党内の「麻生降ろし」も失速気味だ。麻生支持の森喜朗が任期満了選挙を唱えるのは分かるが、近ごろは反麻生の中核の一人元幹事長・武部勤までが「新総裁の手で、任期満了選挙」を唱えており、これでは迫力は出ない。問題は、西松疑惑にもかかわらず麻生の支持率が好転しないことだ。「首相にふさわしいかどうか」を聞く毎日新聞の世論調査に至っては、逆に1ポイント減少している。こうした中で、麻生自身や外務・防衛両相から北朝鮮が発射準備に取り組んでいるテポドン撃墜の可能性に言及する発言が、相次ぎ始めた。
昔、田中角栄が「共産主義国からミサイルが一発でも飛んでくれば、国論はまとまる」と述べたことがある。外敵利用の政権浮揚だ。今のところは北へのけん制にとどまっているという見方が強いが、実際に撃墜するとなれば、北は「戦争を意味する」と警告している。オバマもクリントンも外交柔軟路線を打ち出したばかりで、ミサイル撃墜となれば、ちゅうちょするに決まっている。日本単独で撃墜行動に出た場合には、戦争覚悟の戦後最大の安保上の決断となる。こんな危険な賭が、麻生に出来るはずがないと見るがどうであろうか。“テポドン効果”などは、まず政権浮揚になるまい。いずれにせよ自民党にとっての大敵失であるにもかかわらず、政権浮揚のためのこれといった名案は見あたらない。小沢の秘書逮捕に比べれば、麻生の誤読や失言癖、ホテルのバー通いが小さく見えるのに、支持率が低迷しているのは、巡り合わせが悪いとしかいいようがない。しかし、麻生が景気対策に専念して、その効果が現れてくれば、支持率も回復するかも知れない。麻生はそれを見極めた上での解散総選挙を選択したいのだろう。
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