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2009-04-02 08:07
「北ミサイル」問題は麻生政権にプラスの作用
杉浦正章
政治評論家
追い風は「小沢続投」だけではない。北朝鮮の“衛星ミサイル”問題が、麻生政権評価にプラスの作用を及ぼし始めている。早ければ2日後に迫ったミサイル発射への対応、さらなる重要課題である核弾頭小型化成功への対応など、運び方によっては有利に取り組める問題は山積している。国の安全保障問題は総選挙で「自民有利・野党不利」の図式になることが多いが、野党は既に弾道ミサイル発射の自制を求める国会決議で、国連決議違反とする部分の削除をしている。これは中国・ロシア寄りとも受け取れる対応であり、選挙の争点化し得る問題となって浮上した。北朝鮮をめぐる安保・外交論議は、政権にプラスの浮揚作用をもたらしそうだ。実際、首相・麻生太郎のミサイル問題に対する動きは、掛け値なしに活発で、かつこれまでのところ成功している。防衛、外務、官房の各相に「迎撃」発言を繰り返させ、国内だけでなく国際世論にも影響させた。
まず米国が反応し、国務長官・クリントンは31日「日本は領土を守るあらゆる権利を有する」と発言、米大統領報道官ギブズも、日本が北朝鮮のミサイルを迎撃した場合、軍事的報復措置を取るとの北朝鮮の警告を「挑発行為と判断する」と批判した。ロンドンにおける日韓首脳会談でも大統領・李明博から「迎撃を認める」旨の発言を引き出した。英国首相・ブラウンとも安保理対応の必要性で一致している。少なくとも発射中止を求める国際包囲網の形成には、中国、ロシアを含めて成功した形だ。発射後は米、韓、英などとともに、国連安保理決議でも共同歩調をとる方向となった。国内世論では産経FNN世論調査で、北ミサイル迎撃態勢に賛成が81%を占め、国連での制裁決議など、「国際的な圧力を強めるべきか」との問いには、「思う」が90.5%に達した。幸か不幸か、こうした世論の動向に逆行する動きを野党は見せている。国会決議作成でごねて、「ミサイル発射は国連決議違反」とする部分を削除させたのだ。
共産、社民両党が「北朝鮮は人工衛星と称している」と北の主張をうのみにして反対。これに民主党や国民新党も同調したため、与党側も削除を余儀なくされた。驚くべき認識不足で、かっての社会・共産両党の「安保何でも反対」路線を想起させる。日本の安全保障体制を根本から練り直さなければならない問題も現実問題となっている。かって当解説で米国防情報局(DIA)局長のマイケル・メープルズが、議会証言で「北朝鮮が核弾頭を弾道ミサイルに搭載可能なまでに小型化させることに成功した可能性がある」との認識を述べたことを明らかにした。今度は国際研究機関「国際危機グループ」が3月31日、北朝鮮が核弾頭の小型化に成功したとの報告書を発表したのだ。すでに東京に核弾頭を撃ち込む能力を持つノドン・ミサイル320基が配備済みの可能性があるという。まさに繁華街を出刃包丁をもって駆け抜けようとしているような異常さを感じさせる北の対応だが、これに手をこまねいているわけにもいくまい。専守防衛・平和外交も“包丁男”のどう喝と脅迫に対しては、素手では立ち向かえない。
要するに、我が国の安全保障体制を組み直さなければならない段階に入ったのだ。核ミサイルが東京に撃ち込まれれば、たとえ小型なものでも、きたない原爆の汚染で日本は即死、世界経済も一挙に破たんする。「それなら核武装か」と短絡するのも影響が大きすぎる。要するに、北の核ミサイル数発を完全に迎撃できる態勢を作り、報復は米国の核の傘に頼る体制を再確認して確立することだ。日米安保条約はそのためにある。また自民党内には専守防衛でも敵のミサイル基地を先制攻撃することは可能であるという議論があるが、その法制化も課題となろう。「新安保体制」を北に示すことが抑止力となる。どの国の体制も「自滅」と分かれば、その道は選ばない。北もその例外ではあり得ない。このように麻生政権は、ミニ・キューバ危機ともいえる北のどう喝外交に対応する材料には事欠かない。対応次第では田中角栄が「外国のミサイルが一発落ちただけで、この国はまとまる」と予言したように、総選挙で有利な展開に持ち込むことが可能だ。むしろ積極的に争点に浮上させる必要があるかも知れない。
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