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2009-05-22 08:00
一歩前進の自民党世襲制限
杉浦正章
政治評論家
一瞬、元首相小泉純一郎の側近中の側近である元幹事長・武部勤が、小泉を裏切って世襲制限に踏み切ったのかと思った。元首相といえどもノー・バッジになることは惨めなものだと感じたが、そうではなかった。息子小泉進次郎は無所属で立候補し、当選後公認というシナリオだ。語るに落ちた自民党の世襲制限だが、一歩前進には違いない。自民党政治に完ぺき性を求めても、八百屋で魚をくれというようなものだ。今後世襲制限を実施に移しても“小泉方式”と言う形で抜け穴は残る構図だが、総じて抑制は効くだろう。それにつけても、紛れもない仕掛け人の選対副委員長・菅義偉という代議士はすごい男だ。
民主党より早く世襲制限を言い出した時は、自民党内からごうごうたる批判にさらされた。武部自身をはじめ、前官房長官・町村信孝らが猛反対。衆院議院運営委員長・小坂憲次にいたっては、「私は世襲の権化」とすごんでいたが、5月21日は、町村が「どうぞお好きに」。小坂も「自分の親族を立候補させることは考えていない」と述べた。党内は急旋回である。背景には神奈川県連会長でもある菅が武部を説得し、武部を通じて小泉を説得したのだ。そういえば武部も10日北見市で、「世襲候補は党公認ではなく、無所属で立候補すべきだ」と漏らしており、いまになって思えば、宗旨変えの兆候を見せていたのだ。
民放テレビなどは「自民党は公認候補を立てるべきだ」と息巻いているが、立てても相手は「小泉王国」。とても勝てない。県連会長菅はそこまで読んで、小泉説得構想を練ったのだ。朝日新聞は22日の社説で「先手をとったのは民主党だ。民主党が次の総選挙で世襲禁止を目玉に攻勢をかける構えを見て、何もしないわけにはいかなくなったようだ」と皮肉っているが、皮相的だ。菅が言い出したのを聞いて、鳩山由起夫が慌ててマニフェストに盛り込んだから、先行しているように見えただけだ。世襲が衆院で17人しかいない民主党だから楽に出来たのだ。
自民党党改革実行本部(武部本部長)は方向を打ち出した以上、後には引けないだろう。衆院480人中131人が世襲であり、そのうち107人が自民党所属議員とあっては、唐様で書く三代目の弱体化をたどらざるを得ない。“小泉方式”という抜け道はあっても、やらないよりはましだ。無所属立候補は、小泉のようなケースは別として、極めて当選が難しい。世襲への歯止めになることは間違いない。鳩山が小泉のケースについて、「また自民党に入るとすれば姑息(こそく)な発想。国民・有権者をだましたことになる」と反応したが、自分自身は4代目。「地盤・看板・かばん」の地盤こそ別だが「看板・かばん」付きで当選したことを、忘れてもらっては困る。
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