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2009-06-17 07:41
自民党内は、まるで幕末の江戸城内
杉浦正章
政治評論家
自民党内はまるで幕末の江戸城内のようになってきた。大政奉還論まで飛び出す混迷ぶりだ。混乱の糸をほぐすと、7月12日の都議選が政局に直結する流れとなっており、解散時期や「麻生降ろし」の展開も密接不可分だ。迷走の根底には、自民党本部の“選挙情勢分析”の読みがある。驚くべき敗北を予感させるものであることが、原因として存在する。民主党単独過半数の流れだ。その絶望感が全党を覆っているのである。自民党元幹事長・加藤紘一が16日、記者団に明らかにしたところでは、総選挙の票読みをすると「165議席説があるが甘い見通しだ。それさえも取れないだろう」という状況だという。確かに各種世論調査は、内閣支持率が10ポイント前後落ち込み、首相にふさわしいかどうかで鳩山由紀夫が麻生太郎の倍という流れだ。
民主党は完全に「西松問題」以前の1、2月頃の支持率を回復した。民主党の1月に行った選挙情勢調査は「270から280議席」(鳩山由紀夫)だったというから、おそらくその状況を回復しているのだろう。480議席のうち自民、民主で400議席を分け合うとすれば、加藤のいう165議席も取れない状況が分かる。現状では130から140議席説があるのだ。これを背景に、自民党内がまさに浮き足立っているのであり、その象徴として環境政務官・古川禎久の「この際、大政奉還を決断し、国民の懐深くに帰り、保守政党としての原点に戻るべきだ」発言に至るわけだ。しかし大政奉還はするまでもなく、民主党圧勝の流れとなれば、この種の発言は、別に言わずもがなのものだ。帰るべき国民の懐も古川の言うように深くない。
また、その“浮き足”が作り出している政局絡みの話は、「都議選とのダブル選挙」説、「内閣改造」説、「麻生降ろし」説の3点セットと言って良い。このうち「都議選とのダブル選挙」は、選対委員長・古賀誠が麻生に15日夜進言したものだが、まずないだろう。幹事長・細田博之も「来週解散しなければならなくなる」と否定している。公明党との関係断絶を招き、選挙協力に確実に影響する。「内閣改造」と「麻生降ろし」はありえない話ではないが、筆者から言わしてもらえば、「内閣改造」は小手先細工、「麻生降ろし」は大型小手先細工であろう。国民の「チェンジ」の潮流に対して蟷螂(とうろう)の斧で立ち向かうようなものだ。
だいいち改造して目先を変えてみても、トップが変わらない限りインパクトはない。トップを変えてみようとしても、一挙に局面を展開できる候補者がいるのか。鳩山邦夫が手を挙げかねない様子だが、党内はその言動に苦り切っており、支持は得られまい。舛添要一で党内がまとまるのか。与謝野馨も、石破茂もスケールが問題だ。回天の荒技は、小泉純一郎再登板だが、火中の栗を拾う男ではなさそうである。それでも麻生主導のの解散・総選挙で“べた負け”の構図も選択したくない。自民党は大きなジレンマを抱えつつ、当分漂うしかない。断定的に政局を読み切れる状況ではない。
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