そして中国の国際政治・経済専門家の多くは、自国の力を過大評価することなく、国際協調、現状維持の中で自国の発展をはかろうとしているし、韓国でも潘基文氏が国連事務総長になったのを契機に「グローバル思考」――自国や朝鮮半島統一のことばかりでなく、世界全体の問題を考え、その解決に貢献しようとするもの――への傾向が国際政治・経済専門家の間に顕著になっている。だが北東アジアでは同時に、政治・軍事面では米中、日中の間で対抗意識が顕著であるため、これを放置しておくと、北東アジアはこれから世界で最大の軍備競争の場となりかねない。外部の勢力は「歴史問題」をあおりたてることで日中韓の間を裂き、武器を売りつけ、中国市場を独占しようとするだろう。これは全く不要で、不毛な対立だ。北東アジア諸国は、地域の Status quo が維持され、グローバルな自由貿易の原則が維持されていれば、これからも国民の福祉を長年にわたって向上させていくことができるからである。
20年先、30年先には北朝鮮もこのクラスター「北東アジア共同体」に入れるだけの国になっているだろう。共同体の本部は、EUのブラッセルにならって、地理的な中央部、つまりソウルとか、ピョンヤンに置くのだ。国連の運営にあたったことのある韓国人なら、日中の張り合いをうまくさばいていくことができるだろう。2010年には日本で、2011年には米国でAPEC首脳会議が開かれる。それを契機に、「北東アジア共同体」、ASEAN、米州における同様の取り決めなどのクラスター形成と相互の関係、そしてそれらの間を貫いて自由貿易と Status quo を保証する米国の位置などを皆で確認できれば、世界は前向きに進んでいくだろう。これは思い込みでも、前向きの思い込みなのだ。