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2009-07-27 07:34
「ぶれ」の鳩山は「平成の三条実美」か
杉浦正章
政治評論家
海上自衛隊の「給油派遣容認」で「ぶれた」民主党代表・鳩山由紀夫だが、過去の発言を精査すれば、ぶれ方は尋常ではない。まさに“元祖ぶれ人”であることがわかる。とりわけ安保防衛問題でのぶれが目立つ。ぶれというより口から出任せ的な発言が多い。近現代史に詳しい作家の半藤一利が、テレビ番組で平成の「三条実美」と形容したが、まさにぴったりの表現だ。問題はその“公家政権”の脆弱性だ。さすがに政治家というのは、人を見るのが商売だ。切り口がうまい。これまで首相・麻生太郎ばかりを口を極めて非難してきた野中広務が、26日のテレビ番組で「故人献金」で政治資金規正法違反を認めた鳩山の弱点を完膚無きまでに形容した。
「カネに汚い」というのである。新党「さきがけ」結成で出した資金を、「返してもらえるか」と大ぶれにぶれたというのだ。野中によると「鳩山君はさきがけを作るときに、武村正義君が出したカネと自分が出したカネを比較したうえで、武村さんは官房長官をやったのに、私は官房副長官だけだった。政党助成金制度が出来たら返してもらいたい」と述べたというのだ。政党を結成する資金を、人事が不満で「返せ」と言ったのだから、これは前代未聞のぶれ方だ。野中は「こういうところで、けつまずかないかという気がしてならない」と付け加えた。確かにサラリーマン社会でもこの種の人間が職場に1人、2人いるが、だいたい排除されるのが常だ。「鳩山政権」になった場合の弱点を突いている。これを聞いた半藤が「まさに三条実美ですね」と引き取ったのだ。明治維新を優柔不断に生きた公家政治家である。温厚な性格から、リーダーと言うより政府部内の対立調整役だった。
鳩山の場合、外交・安保でも180度ぶれるケースは多い。先に指摘した海上自衛隊の給油と海賊対策での出動容認は、現代政治史に残るぶれ方である。とりわけ「給油」は、3分の2の再可決までに国会が費やした費用とエネルギーが膨大だ。血税を使っての「反対のための反対」であったことになる。加えて重要テーマでのぶれも目立つ。核武装をめぐる発言で辞任した防衛政務次官・西村眞悟の問題に絡んで、「核武装してもいいかどうかを国会で検討したらどうかと言った瞬間にクビを切られるとなると、国会で核をもつべきかどうかなんて議論がなされなくなる」と述べていたものが、「核を議論すること自体が、国際社会に間違ったメッセージを与える」となった。敵基地先制攻撃に関しては「撃たれるままで手をこまねいていなければならないかというと、必ずしも憲法ではそうではない」が「相手の基地を先行的に、こちらでたたきのめしていいなんていう議論も、まさに核武装議論と同じように、私は慎むべき議論だと思う」といった具合だ。
野党の幹部なら発言が軽いと見られてすむ話だが、一国の首相として外交・安保がこの調子でぶれると、国の命運をまさに左右することになる。もちろん国会では立ち往生することになる。「鳩山政権」となった場合、冒頭から自らの政治資金規正法違反の説明責任が問われて発足することになる。また年内に公約を反映した予算編成が出来るかどうかだ。大幅な越年編成も予想される。11月の日米首脳会談は事務当局のアレンジでそつなくこなせても、主張通りに日米普天間合意の撤回まで出来るだろうか。「普天間」は喉に刺さった棘になり得る。どれ一つ取っても「ぶれ」は許容されない。もう大向こう受けの発言をしても、誰も拍手はしない。白楽天は「槿花一日自(おのず)から栄を為(な)す」と詠んだ。槿花一朝の夢となる危険を常にはらんでの政権だろう。
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