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2006-05-11 21:30
伊藤氏の問題提起を真剣に取り上げたい
上野 忠
大学教授
ふと「近代の破綻と非ヨーロッパ文明の再発見」というテーマに引かれて、とうとう最後まで読みきってしまいました。国際政治の専門家だと思っていた伊藤憲一氏が、こんな透徹した文明史観の持ち主だったとは今日まで知らず、不明を恥じました。伊藤氏は「近代文明がいろいろの限界に逢着し、破綻に直面していることはすでに見たとおり」であるとしても、その直面する問題を解決する方法は「近代文明の基本的な要素に見切りをつける」ことなのか、それとも「依然として基本的には近代文明の敷いた路線のうえを走らざるをえず、また走りつづける」ことなのかと問うています。
伊藤氏の結論は、ヨーロッパ文明に源泉をもつ近代合理主義の肯定的側面を認めつつも、その否定的側面の顕在化しつつある現代の世界的状況を見るがゆえに、それを補完し、あるいは乗り越える新しい「価値観やライフ・スタイルや方法論」の必要性を主張しておられます。しかし、そのような新しい「価値観やライフ・スタイルや方法論」をどこから持って来るのかといえば、人類のストックとしてはそれらは非ヨーロッパ文明の秘蔵、内臓してきた「価値観やライフ・スタイルや方法論」以外にはなく、ここからたとえば「分析」に対する「総合」、「論理」に対する「直感」、「進歩」に対する「循環」、「競争」に対する「共生」などの可能性が強調されています。
ヨーロッパ的な「論理」に対する強い批判は、現在100万部を超える大ベストセラーになっている藤原正彦氏の『国家の品格』を貫く中心テーマであります。また「共生」の可能性の追求は、現代日本の誇る世界的建築家黒川紀章氏のライフワークのテーマです。私は一度この3人が一堂に会して、「現代文明の危機を救う非ヨーロッパ的価値観の再評価」というようなテーマで座談会をやってくれないかと思っています。とりとめのない話をしましたが、伊藤氏の問題提起を真剣に取り上げることを訴えて、筆を擱きます。
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