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2010-02-24 13:52
トヨタ問題は、日米間の貿易摩擦である
塚崎 公義
久留米大学准教授
トヨタの大規模リコールは、トヨタの失策の結果である。しかし、トヨタに対するバッシングは、貿易摩擦の色合いが強い。そう考える根拠は、リコールを実施した各国で、米国の動きだけが目立っていること、米国内でもトヨタの工場のある地域とそれ以外で大きな温度差があること、などである。
過去十余年にわたり、米国経済は比較的好調であり、目立った貿易摩擦は見られなかった。しかし、リーマン・ショックにより、米国内の貿易摩擦へのマグマは溜まっていた。米国経済のかつての象徴であったGMが破綻し、最近の花形であった金融業が崩壊し、失業率も上昇し、米国民の米国経済に対する誇りが大いに傷つき、米国民のフラストレーションが大いに高まったからである。これが実際の摩擦に直結しなかったのは、リーマン・ショックもGMの破綻も「自損事故」であり、対外的な摩擦に結びつけることが憚られたということであろう。
そうした状況下、マグマが噴出すための地表の割れ目を提供したのがトヨタの失策であった。選挙を控えた米国の政治家に格好のパフォーマンスの場を提供したのである。従来の貿易摩擦は、短期的には日本企業に打撃であったが、長期的にみれば日本製品の優秀さを印象付ける効果も期待出来るものであった。
それに対し今回は、日本製品に対する信頼性を低下させるという意味で、従来型のものよりも深刻な影響を日本経済に与える可能性がある。トヨタが安全性を強調すればするほど、「反省が足りない」という印象を与え、かえって批判を強めてしまいかねない点も、問題を複雑化している。日本のマクロ経済が長期低迷に喘ぐ中で、トヨタは日本経済の希望の星であった。一刻も早くトヨタが信頼を回復し、日本国民の日本経済に対する自信を回復させてくれることを切に望む次第である。
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