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2010-03-08 07:37
これでもかこれでもかと、マニフェスト無視の鳩山政権
杉浦 正章
政治評論家
小沢・鳩山会談で参院選向けマニフェスト政策に着手することで一致したが、その前にやることがあるのではないか。首相・鳩山由紀夫が「マニフェストが守れないときは、政権の座を降りる」と公約して、総選挙を圧勝に導いたことの総括である。マニフェストは半年間の政権担当で目玉公約が次々に破たんした。とどめを刺したのが5日の国土交通相・前原誠司による高速道路値上げ発言だ。かって、これほどトリッキーな政権があったであろうか。鳩山はまず衆院選マニフェストの破たんを率直に認め、その撤回・破棄を宣言をするべきだ。
「守れなければ、政権の座を降りる」との発言は、総選挙前の党首討論や街頭演説で鳩山が繰り返し“宣言”してきたものだ。しかし、政権担当後の政策遂行の過程は、マニフェスト断念の過程であった。大きくとらえれば7.1兆円を節約で賄うという宣言が、大向こううけを狙った事業仕分けでたったの7000億円しか節約できなかった。天下り禁止は、郵政社長人事での天下り実施に変更。暫定税率は、幹事長・小沢一郎の一声で廃止から実施に逆転変更。さらに子ども手当は、元財務相・与謝野馨の試算によると、初年度はともかく次年度からは扶養控除廃止などの増税が原因で、手取り減となる家庭がでてくる。多くの家庭で、現行児童手当に1000円から2000円上積みをする程度の結果となることは必至だ。来年度からの全額2万6千円支給の公約も、財源5.3兆円のめどは全く立たっておらず、その実現はまず困難だろう。平均で1047万円も支払われている公務員給与の2割カットも労組への選挙対策で見送りだ。
2011年度はこれに農家個別所得保障の本格導入、基礎年金の国庫負担引き揚げなどが加わり、総額で12.6兆円の財源が必要になるが、税収は更に落ち込み36兆円と予想されるに至っている。全部のマニフェスト要素を取り入れたら、100兆を超える水膨れ予算となり、長期金利上昇の直撃を受けかねない。国債価格がコントロールを失いかねない発散寸前の状況である。鳩山は行政刷新担当に枝野幸男を据えて事業仕分けに取りかかるが、枝野の発言ほど何を言っているのか分からない発言はない。分かりやすいのは小沢批判だけで、財政・経済の本質は聞かれてもそらし、枝葉末節を語る傾向が顕著だ。マスコミが事業仕分けで虚像を作ってしまった感じだ。第2次事業仕分けで独立行政法人と公益法人に斬り込むのはよしとしても、12.6兆円の財源確保など不可能に近い。
加えて最大の目玉の高速道路無料化は、前原の「自民党政権よりもさらに財源を使っての割引は、トータルとしては考えていない。むしろ値上げになると思う」という発言だ。本来なら重大なマニフェスト変更は鳩山が説明すべきなのに、前原がそれをこともなげに言ってのける。背景には、割引に振り向けられるはずだった財源の一部を、小沢が昨年予算で官邸に乗り込んだ際、高速道の拡幅や建設に回すことを主張、無料化などはとても不可能となったのだ。まさに小沢の路線は「コンクリートから人へ」ではなく「人からコンクリートへ」の回帰路線だ。
これでもかこれでもかとマニフェスト無視の政策が展開されるに至っているが、今度は参院選マニフェストに何を書こうとしているのだろうか。何を掲げても、これだけ国民をコケにしておいて、まだ信用する国民がいるとでも思っているのだろうか。読売の3月8日の紙面の世論調査は、57%が参院選での民主党過半数達成を望んでいない。要するに、財政再建に不可欠な消費税導入への道筋を示さずに、いくらマニフェストを作成しようとしても、国民欺瞞(ぎまん)のばらまき行政となることを、鳩山政権はいまだに気づいていない。新聞論調も「政治とカネ」でほおかむりした上に、マニフェスト破たん路線をひた走る姿には、ほとほと手を焼いた感じだ。朝日の編集員・星浩が民放テレビで「政権のバージョンアップが必要だ。体制見直しを政策面でも、人事の面でも、考えるべきだ」と発言したのは意味深い。先に朝日が鳩山・小沢の「同時辞任」を大きく見出しにとったことを指摘したが、3日には「民主党の暗部をえぐり出して、早く手を切れ」の社説だ。どうも朝日は民主党を生き残らせるためには、鳩山・小沢のクビを切って、体制を刷新させるしか方途はない、と判断し始めたふしが濃厚だ。
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