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2010-04-12 07:28
ダイナミックな躍動感に欠ける「たちあがれ日本」
杉浦 正章
政治評論家
国会議員が仮にも新党を作るとなれば、マスコミは報道せざるを得ないが、作った後が続かない。それどころか、いったん持ち上げ、はやし立てていたものを落とす。これがマスコミの習性だ。「たちあがれ日本」に関して一斉に出た社説は、5紙のうち3紙までが躍動感の欠如を指摘している。主義も主張も異なるメンバーが「打倒民主党」のワン・テーマで集まった「古希新党」では、期待や展望を持とうと思っても無理なのであろう。日本の政治をどこに持ってゆくのかさっぱり分からないし、だいいちダイナミックに政治を動かす原動力になり得るかも疑問、というのが正直なところだろう。この調子では1月もすると、「辻説法今日はどこまで行ったやら」ということになりかねない。
新聞の社説を全部熟読したが、今回の場合の読み応えは、朝日、毎日、日経、読売、産経の順だ。読売は新党の内容説明ばかりで、肝心の「主張」に乏しかった。朝日、毎日、日経は一致して新党に躍動感がない点を指摘している。朝日は「何とも心躍らぬ新党の船出である。何より平均年齢約70歳という面々から、新しい時代を切り開く清新さは感じとれない」と断じた。毎日も「平均年齢は約70歳となり、新鮮ではつらつとしたイメージを与えたとは言い難い」。日経も「高揚感無き新党の船出」である。本来年齢と、はつらつさは関係ないが、ツートップが病み上がりとあっては、痛々しく感じてしまうのも仕方がないことだ。応援団の都知事・石原慎太郎がひとり高揚感を表明しても、しらけるだけだろう。産経だけが「日本復活に政治生命をかけるという決断と心意気を無駄にしてはならない」と、新党への思い入れが強い論調を展開させている。
基本政策でも、毎日が消費税に関して「発表文書では『税制抜本改革』などとするだけで、消費税率の引き上げを明確には記さなかった」と、消費増税に踏み切らなかった点を突いている。読売は「与謝野氏は月刊誌の論文で、消費税率の引き上げに取り組むとしている。あえて国民に負担を求める増税に言及したのは、責任ある態度といえる」と述べているが、ちょっとピントがずれている。この場合与謝野個人を褒めても仕方がないではないか。政界再編との絡みについても言及している新聞が多い。「新党は政界再編の橋渡し役を目指すというが、具体的にどんな姿を描いているのか。大連立構想の再現をにらみ、その接着剤となることも狙っているのか」(毎日)に代表される疑問の提起だ。日経も「新党のわかりにくさは、参院選後の立ち位置にある。与党を過半数割れに追い込んだ後に、どのような形で存在感を発揮するのか」と強調している。
確かに分かりにくいが、言われているように「与謝野が碁敵の小沢一郎と親しいから」といった陳腐な週刊誌話しにとらわれすぎではないか。まだやっと結成にこぎ着けたばかりで、政界再編に当事者の思いがゆくような段階ではあるまい。理路整然と論旨を展開する与謝野も、痛いところを突かれた。朝日は、高齢を指摘した上で「自民党離党前、執行部に中堅・若手の大胆な登用を求めたのは、他ならぬ与謝野氏だ。これでは話のつじつまが合わないのではないか」と筆者が数日前に書いたとおりの論法を展開している。朝日の見出し「たちあがれ、民主、自民にそう言いたいも」、筆者の「立ち上がるべきは政治」とそっくりだ。近ごろ朝日が筆者の論調と似てきた。毎日は「民主党との対決姿勢を強調するほど、離党劇で最大の打撃を被ったのが自民党だという現実とのギャップが、さらに際だってしまう」と平沼を批判しているが、結党の矛盾を見事についている。産経は概して冴えなかったが、「二大政党が十分に機能しているのか。新党が民主、自民両党に課題を突きつけたといえる」の部分はもっともであった。
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