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2010-04-29 12:16

日本のソフト・パワーを損なっている鳩山外交

高峰 康修  岡崎研究所特別研究員
 昨年11月から今年2月にかけて英BBCと読売新聞の合同で行なわれた、33カ国を対象にした国際世論調査によれば、日本は「世界に良い影響を与えている」という肯定的評価を53%得て、第2位であった。世論調査では、国際社会に影響を及ぼす17カ国と国際機関についての評価が、面接方式または電話方式で聞かれた。今回「良い影響を与えている」という回答を最も多く得たのは、ドイツの59%であり、EUが日本と同じ53%であった。約1年前に実施された前回の調査では、日本は独、英、カナダに続いて4番目の56%を獲得しており、国際社会に対して引き続き良い印象を与えていることが分かる。
逆に、悪い印象を与えているのは、イラン56%、パキスタン51%、イスラエル50%、北朝鮮48%などである。順当に「ならず者国家」が名を連ねていると言えよう。

 国際社会に良い印象を与えているということは、ジョセフ・ナイ流にいえば、「ソフト・パワーがある」ということである。もっと正確には、「印象」は、まだ「潜在的なソフト・パワーに過ぎない」と言った方がよいかもしれない。このよいイメージを実際の発言力として具現化できてはじめて「パワー」と呼ぶに値するのであろう。

 興味深いのは、調査では、自由主義、人権思想、自由経済といった欧州的な穏健な価値観をもった国々が上位を占めているが、我が国もそのような印象を与えているらしいということである。米国もこれらの価値観を持ってはいるが、「強面」のイメージが評価を多少損ねているようである。「世界の警察官」としてグローバルに安全と秩序を提供していながら、あまり良い印象を得ていないのは割に合わない話ではある。ところで、「強面」のイメージを与えない国の国際的評判が高いからと言って、日本が安全保障にまともに取り組まなくてよいわけではないのは、言うまでもない話である。その点を誤解されるのは全く本意ではない。

 調査の結果を過度に喜ぶべきではないが、日本の国際的評価が高い原因の一つは、その誠実さにあると思う。これは、日本が持つ重要なリソースとして大切にしていくべきである。たかが世論調査の結果に過ぎないとも言えるが、パブリック・ディプロマシーの時代にあって、そういうものを全く無視するというのも正しくないのであろう。しかし、鳩山政権の不誠実な言動と極端に内向きな政策は、日本が持つ重要なリソースを侵食する可能性がある。具体的には、インド洋での海自の艦船による給油活動の中止や、核安全サミットで本題とは全く関係のない普天間問題をオバマ大統領に半ば強引に話して、本題である核問題で何ら存在感を示せなかった、というような行為である。鳩山政権の外交により、我が国の潜在的なソフト・パワーが失われていくことを強く憂慮する。
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