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2010-05-16 16:34
私の欧州見聞報告:「欧州は一つ」のイメージ崩壊
小沢 一彦
桜美林大学教授
海外研修時を利用して、現代ヨーロッパ情勢を調査・研究してきた。当初の「欧州は一つ」というイメージは一挙に崩壊し、まだ中心と周辺の格差が大きく、主権国家や地方(州)、マフィアが力を持っているのが感じられた遠征だった。イギリスを中心に、「欧州火薬庫」のバルカン周辺の20カ国ほどを巡ったが、主だった国の概略をお伝えしておきたい。
まずは、イギリスの隣国アイルランド。一度は停戦したものの、過去からのアングロ・サクソン対ケルトの対立は残り、北アイルランドの帰属を巡って、いまだにテロが発生している。いずれイギリス連立政権が行き詰まれば、その間隙を突いて、スコットランドなどとともに、北アイルランドも独立する可能性が高い。次に、バルカン半島。ギリシアから上陸したが、緊縮財政政策と公務員削減に反対する激しいデモが連続しており、経済は悪化の一途を辿っている。日本にとっても他山の石である。マケドニアはまだ地雷原も残されており、国連軍やNATO軍も駐留、内部のアルバニア系との衝突を抑止している。セルビアは、NATO空爆に恨みを持っており、EU加盟は希望していても、国民感情では同じスラブ系のロシアへの親近感の強い国である。
高台にあるベオグラードからアドリア海に向けてバール鉄道で急峻な山岳地帯をゆっくりと下り、モンテネグロへ。まだセルビアと分離して間もない、建国4年目だが、観光や鉱物資源が主な産業で、人口もわずか60万人と、隣の200万人を抱えて半独立のコソボを刺激している。ボスニア・ヘルツェゴビナはボスニアック、セルビア、アルバニア、クロアチア、ロマなどが併存し、「国民統合」にはまだまだ時間が必要である。ついでにアルバニアだが、金髪碧眼が多くイスラーム教を信じる謎の国である。古代イリュニア人の末裔らしいが、自主自立意識が旺盛で、プライドも高い。
ダルメシアン犬の故郷クロアチアは、ようやく経済復興中であるが、ブーメランのような格好の領土で、多様な文化が見られる。ナチスに協力したこともあるが、サッカーや格闘技などでも強豪ぞろいだ。スロベニアは、1991年にクロアチアとともに旧ユーゴスラビア連邦から独立したが、歴史上、欧州諸大国に支配され、独立国家を持ったのは初めてである。その他、周辺国では、トルコは、ギリシアの妨害もあってEUに入れずに、次第に世俗主義を捨ててイスラーム化し、イランにも接近中。また、キプロスはギリシアとトルコで南北に分断されたままで、非常に貧しい印象を受けた。ルーマニア、ブルガリアでは、マフィア経済が強く、いたるところにカジノが立ち並び、正教会や旧共産党系の建物とミスマッチしていたのが印象的だった。
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