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2010-05-16 22:17
ギリシャ国債問題は世界全体を変える?
河東 哲夫
元外交官
ギリシャ国債問題や、それに関連してスペイン、ポルトガルなどの「ソブリン・リスク」議論を見ていると、ITバブル、サブ・プライム・バブルと金融恐慌が、あたかも世界経済の弱化を示すがごとく、断末魔の喘ぎのように、その間隔をどんどん狭め、ついに究極のバブルに至ったのかという感じがする。バブル崩壊は世界経済の終わりではない。人間がモノやサービスを欲し、それを買い、それを生産していく限り、経済は終わらない。ただ、金融恐慌が2年前のようにモノ作り、サービスをも阻害すると、世界の所得水準は一気に低下し、それに応じて経済は一段、二段低いところから再スタートということになる。
ソブリン・リスクだから、バブル崩壊の規模は大きいだろう。英国、米国、そして日本にも及ぶかもしれない。そしてその結果、世界秩序が変わるのだろうか? 大航海時代以来、そして産業革命以来、連綿として続いてきた欧米文明の支配は遂に終わるのか? いや、BRICsの経済も、それ以上の打撃を受けて、20年前くらいの姿に戻るのか?
そしてギリシャの例が端的に示すように、選挙権の拡大に伴って連綿と続いてきた社会保障の拡大、そして票欲しさ故の大衆迎合(ポピュリズム)は、絶え間ない財政赤字の拡大を生みやすいが故に、その限界に達したのか?
さらに、近世から用いられ、遂には金価格との連係から解放されて膨れ上がり、数々のバブルを生むに至った管理通貨は、その信を最終的に失い、世界通貨体制は何らか別の原則で動き始めることになるのか? 金本位制の復活? いやそれは、経済成長を阻害するうえに、豊かな国と貧しい国を固定してしまいがちではないか?目のこらしどころだ。ギリシャ国債問題は、19世紀以来の世界秩序、国家体制、そして民主主義が、賞味期限に来たことを示すものかもしれない。
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