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2010-05-19 07:44
鳩山失政は「政治主導」と「官僚バッシング」の結果
杉浦 正章
政治評論家
口蹄疫にせよ、普天間移設問題にせよ、郵政改革法案をめぐって露呈した閣内亀裂にせよ、鳩山政権迷走・失政の原因は、すべて「政治主導」と「官僚バッシング」にあると思う。政権成立以来、官僚バッシングを展開し、事務次官会議を廃止し、国家公務員法改正案では事務次官を部長、審議官と同格扱いにした。この内閣は、官僚のやる気が起きない道をわざわざ選んで、方針を決めているとしか思えない。事実上官僚のサボタージュかと思える事象も生じている。鳩山内閣は、政治主導の名の下に官僚を外し、自らの両手に手錠をはめて、荒海を游ごうとしているようなものだ。
今回口蹄疫をめぐる対応の遅れで露呈した問題も、一にかかって「政治主導」の失敗であろう。農水相・赤松広隆は、口蹄疫という時間が勝負の問題に対して、少なくとも当初は重要性の認識が皆無と言ってもよい対応だった。「自分が宮崎に行くと、騒ぎが大きくなる」と通常の常識では考えられない判断を下し、中南米外遊に出かけてしまった。ここは、自らが消毒液を浴びてでも、現地で陣頭指揮を執る場面だった。騒ぎは大きくなればなるほどよかったのだ。なぜなら、大臣が目の色を変えて対応すれば、自ずと下部組織に緊張感が走るからだ。もう一つの失敗は、副大臣、政務3役にしっかりした引き継ぎをした形跡が見られないことだ。外遊するならするで、「政治主導」の体制を整えておかなければならない。これは不可欠の事項であったはずだ。「私のやって来たことに、反省するところはない」と赤松は開き直ったが、すべてが反省すべきことではないか。鳩山政権は、首相、幹事長以下反省することを知らない政権である。
官僚の方ももちろん責任は問われるが、近ごろはどの省も、「お上ご一任」の風潮が強く、政治家から指示がなければ動かない官僚が多いと聞く。今回も「指示待ち」の側面があったのではないか。普天間問題も、今朝の読売新聞のスクープによると、結局辺野古の埋め立てに戻りそうだという。鳩山が8か月間移転案をもてあそんだ結果、「県外」ばかりか、「杭打ち方式」まで断念だ。おそらく外務・防衛官僚の多くが、この事態を予測していたのではないか。「お上ご一任」だから、進言しないのだ。首相・鳩山由紀夫は、そもそものはじめから在米日本大使館や外務省の幹部を移設先をめぐる米国との調整作業から排除する方針であったようだ。内閣が掲げる「政治主導」での解決をアピールする狙いであったという。しかし、専門家の判断が入っていない「杭打ち方式」などさまざまな解決策に対して、米側の不信の念が強く、結局最終的には「官僚主導」の結果とならざるを得なかったのだろう。
郵政改革という最重要法案をめぐって露呈した閣内亀裂の最大の原因も「事務次官会議の廃止」だ。事務次官会議で事前の調整があれば、問題は全く起きなかったであろう。事務次官会議は、各省の情報交換の場でもあったのであり、政府全体が情報を共有する場だったのだ。このように重要問題で官僚を遠ざけた結果が、まさに自業自得の結果を生んでいるのだ。首相以下に官僚を使いこなす度量がなく、官僚も「政治主導」を根拠に出しゃばらない構図が出来上がってしまっている。これでは政権の迷走は止まるまい。
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