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2010-08-09 09:39
日本海での米韓軍事演習について思う
水口 章
敬愛大学国際学部准教授
7月25日から米韓が日本海で合同軍事演習を行っている。この演習は、3月に韓国の哨戒艦「天安」が沈没した事件を受けて実施されている。その規模は、1976年以来最大となる。また、日本の海上自衛隊幹部が初めてオブザーバーとして演習を参観している。
この合同演習に対し、北朝鮮と中国が警戒感を示している。特に北朝鮮は、「物理的に対応する」と警告を行っている。その理由は、演習に原子力空母ジョージワシントンとF22(ステルス戦闘機)が投入され、北朝鮮の軍事施設を1時間以内で攻撃できる体制がとられているからの由である。また中国は、この演習について、それが単なる米韓による北朝鮮への戦術的威嚇というだけでなく、北東アジアの戦略的抑止効果を狙ったものだと分析している。
こうして見ると、日本・米国・韓国と中国・北朝鮮の対立構図ができつつあるようだ。その一方、日本が今回の演習にオブザーバー参加することで、「韓国の海軍力が日本に分析される」と懸念する声も同国内にはあるようである。韓国の哨戒艦沈没事件は、北東アジアの安全保障が如何に不安定なもので、冷戦後のヨーロッパ地域の安全保障環境とは異なるものであるか、ということを改めて関係者に認識させた。多くの人は、この事件の解決の糸口が、国連安全保障理事会や東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラムなどの外交の舞台で見つけ出されることを望んでいただろう。しかし、中国は、北朝鮮を助ける形となり、金正日体制に自信を持たせるような状況さえ招来されている。
北朝鮮は、食糧と石油の供給者である中国を自国の味方につけられたことについて、「偉大な外交的勝利」であると表現している。今回の米・韓による演習を、北朝鮮が脅威と捉え、妥協的態度に転じるとは考えにくい。したがって、北東アジアで核拡散の脅威を低下させられるかどうかは、北朝鮮の海外資産を経済制裁によって凍結できるかどうかにかかってきている。そこでは、国内に多くの朝鮮半島出身者を抱える日本の役割が大きくなってくる。日本の民主党政権が、この難しい政策選択にどのように向かい合うのかが注目される。
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