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2011-02-09 07:38
民主政権は左右蛇行の状態に入った
杉浦 正章
政治評論家
民主党が衆院での予算関連法案再可決と小沢処分を巡って左右に蛇行・ダッチロールを始めた。再可決では、社民党への大接近をし始め、予算案修正も辞さない構えであるが、昨年の鳩山政権が追い込まれた“普天間の悪夢”を彷彿させる状況が生まれかねない。一方で小沢処分に踏み切れば、小沢系の離反でそれこそ再可決どころではなくなる。大矛盾を抱えたまま、ダッチロール状態からきりもみ状態になれば、墜落する。とにかく哀れをとどめるのは民主党国対委員長・安住淳だ。予算案修正で自民、公明両党に泣きつかんばかりに接近しても、全く相手にされず、今度は社民党に秋波を送った。しかし社民党の方が大きな問題を提起している。同党は条件として、普天間移設関連経費の取り下げ、法人税の引き下げ反対などを主張している。とりわけ普天間移設費については、国対委員長・照屋寛徳が「一人になっても反対する」と強硬姿勢だ。安住は「歩み寄れるところがあれば、歩み寄りたい」とワラにもすがりたい姿勢だ。
しかし移転経費がわずか16億円で、予備費で処理可能とはいえ、ようやく修復段階に入った日米関係を考慮すると、修正問題は安住が考えるほど簡単な問題ではない。首相・鳩山由紀夫が「国外、少なくとも県外」との発言で、社民党党首・福島瑞穂に逆手を取られ、のたうち回ったあげく、退陣へと追い込まれたケースが再現しかねない。社会主義の亡霊のような政党への安全保障問題での安易な妥協は、場当たり外交の最たるものとなり、日米関係に与える損傷は計り知れないだろう。国民の多数の支持を得ていない政党に、外交・安保で振り回されてはならないのだ。外相として辛酸をなめた幹事長・岡田克也が、とても黙って見過ごせるとは思えないのだが、貧すれば鈍するの例えもある。
社民党は、照屋に加えて、政審会長・阿部知子も普天間強硬派であり、民主党との提携に前向きな幹事長・重野安正らとは、対応をめぐって割れている。社民党6人のうち5人が賛成しなければ、衆院3分の2での再可決は不可能になるのであるが、民主党が安易に妥協に応ずれば、政権維持の目標を喪失しかねない問題でもある。行き当たりばったりの妥協で、解決出来る問題でもない。一方で執行部は、強制起訴された小沢一郎への処分を「判決が出るまでの党員資格停止処分」でけりをつけたい考えのようだが、これも簡単ではない。小沢が陰で糸を引いて、支持グループの若手や中堅の会合を頻繁に開かせ、処分反対ムードを盛り上げているからだ。参院議員会長・輿石東もいよいよ本性を見せ「処分すれば造反が起きて、総辞職か、解散しかなくなる」と公言し始めた。
小沢の戦略は「皮を斬らせて、肉を切り、肉を切らせて、骨を断つ」ぎりぎりの対応でもある。したがって、例え執行部が社民党を取り込んで5人を確保しても、小沢グループから数人造反が出ただけで、社民党との連携は水泡に帰するのである。逆に小沢は、指一本で断崖絶壁の菅を転落させることが出来るのだ。まるで執行部は賽(さい)の河原で石積みをしているかのようでもあるが、憐れに思った地蔵菩薩が助けに来てくれる可能性もない。マニフェストで国民に大嘘をついた報いで、舌を抜かれる運命が待ち構えているのだ。
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