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2011-02-15 07:22
“やぶ蛇”となった小沢処分は「野良犬のけんか」
杉浦 正章
政治評論家
まるで最初は「出てけ」と怒鳴ったドラ息子に「小遣いはあげないけど、家出はしないでね」と言っているようなものだ。役員会の処分案は一番軽い「党員資格停止」となった。首相・菅直人が「民主党としてのけじめ」と胸を張れるものではない。鳥瞰図で見れば、野党の攻勢は勢いづき、党内の対立は激化し、世論は実態を見破っている。政権全体にとってはマイナス効果でしかない。
とにかく小沢一郎の「政治と金」をめぐる動きは、強制起訴以来4か月間、秘書らの起訴以来1年間も放置して、迷走したのだから、もう国民は辟易しているのが実態だ。菅は新年早々に「けじめをつける年にする」と小沢の議員辞職を求めて威勢がよかったが、なぜか急速にしぼんだ。参院議員会長・輿石東ら小沢サイドから「予算関連法案再可決の人数が足りなくなるぞ」との“脅迫”があり、これを真に受けたのだ。2月10日の小沢との会談で菅は「裁判の決着が付くまで党を離れたらいかが」と言うにはいった。しかし小沢の方が一枚上だ。菅の表情をとらえて「ぼそぼそ話して、相当精神的に参っているのじゃないか」と分析し、「弱った菅」を永田町の共通認識にしてしまったのだ。
「判決まで党員資格停止」の意味するものは何か。とても小沢の政治活動が制約され、大幅な求心力の低下をもたらすものなどではあり得ない。「代表選立候補」の資格が剥奪されても、この政治状況下で小沢は代表選に立候補する気など毛頭ないだろう。むしろ動くなら党分裂指向だろう。党からの政治資金支給ストップも、何の痛痒も感じない最たるものだ。「政治とカネ」に精を出しているのは、微々たる党のカネなど元々当てにしていないからだ。例え選挙で公認されなくても、小沢教信者で固まる選挙区は何の問題もない。度し難い小沢チルドレンらは、離反どころか結束して、執行部を突き上げている。小沢は党員資格停止で「闇将軍」化の色彩が濃厚になっただけだ。
自民党幹事長・石原伸晃が「普通は離党しないといえば除名だが、逆に処分が軽くなった」と見事に実態を言い当てている。この「制裁は加えながらも、党籍にはとどめ置く」という処分は、衆院再可決で3分の2を確保するためのぎりぎりの選択であり、まさに“政治決着”を目指している、というのが読みの本筋だ。しかしその政治決着も、そう簡単には収まりそうもない。小沢には不服申し立てなどの対応が残されており、小沢がその道を選択して長期化を狙えば、泥沼となる。もちろん執行部の目指す予算関連法案再可決は風前の灯となり得るのだ。
みんなの党代表・渡辺喜美が「党を離れる、離れないというのは、われわれには関係のない話。国民からみれば、野良犬のけんかだ」とこき下ろした。一方で前首相・鳩山由紀夫が「何か問題が起きると、党の中でいじめみたいなことが起きる。今もいじめが起きているように思えてならない」と嘆いた。まさに民主党内は「野良犬のけんか」や「子供のけんか」が「政治とカネ」をめぐって発生しており、「小沢処分」が執行部の狙いのように支持率好転につながる兆候は見られない。むしろ“やぶ蛇効果”だけが目立つ。
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