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2006-08-14 07:19
スーダンで真価を問われる中国の資源獲得外交
川口 弘
会社員
中国は全世界的に展開している資源獲得外交を、スーダン、イラン等の人権問題や核開発疑惑を抱えた国とも積極的に進めており、欧米諸国からは激しい顰蹙をかっている。ところでスーダンのダルフール地方で行われている政府軍と反政府軍の戦闘行為は多数の難民を発生させている他、政府軍による大量虐殺の疑惑がつきまとっている。欧米諸国はこれらの犠牲者を拡大させないためには、PKO(国連平和維持軍)の早急な派遣が必要であると主張している。
ところで現在までにPKOの派遣が実現しないのはスーダンのアル・バシール大統領がその派遣はスーダンを再度欧米の植民地化するものとして反対しているからである。そして大統領の反対の背後には、中国が拒否権を行使して反対してくれるだろうという期待があると言われている。中国は紛争が絶えない中東よりもアフリカに重点をおいて石油を求めており、現に中国の原油消費の7パーセントはスーダンから輸入している。従ってスーダンには、中国が配慮してくれるはずだと言う読みもあるようだ。
他方、中国にはPKOのスーダン派遣に賛成できない別の理由もある。それはチベット問題への外国の介入を招く結果になることの危惧である。チベットにおいて中国政府は人権抑圧を非難されているからである。ただ、スーダンでの問題は大量虐殺であり、それは人権とは次元が異なるもっと深刻な事態である。中国としては、この点も十分に認識しているようで、スーダン政府を支持することが大量虐殺行為を認知することにつながり兼ねないことを危惧しているようである。最近アフリカを訪問した胡錦濤国家主席は、スーダンを訪問国から外している。中国は迷っているようである。
ダルフール情勢はパレスチナ、レバノン紛争の影に隠れて世間の注目を引かないが、伝えられるところでは既に20万人から30万人が虐殺の犠牲となっている。更に180万人の難民が発生している。その規模はレバノンの比では到底ない。これが更に拡大されないように紛争の解決を目指すにはPKO派遣が早急に要請される。中国はこの際その態度を明確にしPKO派遣に賛成し、国連、国際社会と協力してダルフール紛争に終止符を打つことに努力すべきである。 それは中国外交が、単に資源獲得のみを目指したものではないことを、世界に知らせる貴重な機会になるであろう。
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