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2011-03-31 12:46
来日するサルコジ仏大統領に求めるもの
角田 勝彦
団体役員
フランスのサルコジ大統領は、東日本大震災後外国元首として初めて、3月31日に来日し、菅直人首相と会談する。当初、日本側は仏側の訪日申し入れに対し、現在の混乱した状況での受け入れは困難と判断し、菅首相より「5月のG8サミットで会うことを楽しみにしている」と回答したが、「サ」の強い意向の表明を受けて、実現に至った由である。フランスは電力の8割を原発に頼る「原発大国」で、今次大震災後も原発の新規建設・輸出を継続する方針であり、福島第1原発事故とその対策が会談の主要テーマになろう。同時期に仏核燃料会社アレバのロベルジョン社長も、専門家5人とともに来日し、東電などに協力する由である。
仏側の支援と連帯に対して改めて感謝したい。しかしここで気になるのは、大震災後に在京仏大使館が流した避難勧告である。「放射線が10時間で東京に来る」との情報も流れ、チャーター便まで用意された。これは日本政府の半径20キロ圏内立入り規制、20~30キロ圏内屋内退避指示を大幅に上回るもので、原発パニックを増幅させた。米国など多くの国も同様の措置をとっており、自国民保護の措置をあまり非難するつもりはないが、少なくとも根拠を示す責任はあっただろう。そうでなければ公的機関であるだけ、一部に流されているデマ報道より悪質だったと言わざるを得ない。
放射能漏れについては、漏れたかどうかのみならず、その発生した原因(例えば爆発か隙間からの漏洩か)や形態(大気か海か)、漏れた量・漏れた物質(半減期)などにより、個々に影響を判断すべきと思われる。場所により差が生じるのは当然だろう。その集約が避難すべき半径の決定になる。例えば28日、佐賀市内で地上に落ちてきた大気中のちりや雨を採取し分析した結果、福島第1原発事故の影響とみられる微量の放射性ヨウ素131を検出した由であるが、佐賀まで危険となったわけではない。
さらに事態は収まってきているようである。フランス放射線防護原子力安全研究所は、米原子力規制委員会や欧州の技術安全ネットワークやフィンランドの原子力当局とも議論の上で、12~22日に福島第1原発から放出されたヨウ素やセシウムなどの量は、チェルノブイリ事故の放出量の1割との暫定値を公表していたが、29日、文科省は「大気中の放射線量は、10都県で平常値を上回り、福島県内は依然高い値を示しているものの、首都圏をはじめ多くの地点で微減傾向が続いている」と発表した。このような背景において、サルコジ大統領が、日本の対策努力を評価するとともに、避難圏30キロの妥当性を認めるなら、内外の民心安定に大きく貢献するだろう。菅首相の説得に期待する。
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