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2011-04-10 23:57
日本は、ODA予算を削減してはならない
吉田 重信
外交問題専攻
東日本大震災後の日本国内の動きをみると、「頼もしい」と評価される動きが多いものの、一部には「憂慮すべき」兆候も出てきている。すなわち、自己のみにかかわり、他を顧みない動きである。たとえば、現在政府部内では震災復興対策の経費捻出を理由として、政府開発援助(ODA)予算を20%削減する案が検討されているという。
日本のODA支出は、かつて世界最大であるとされた時もあったが、近年来日本経済の不振にともない、次第に削減され、その結果、今では世界で第5位に後退している。もし、伝えられる20%削減案が実施されれば、たとえ一時的措置であるとされても、日本の世界ヘの貢献度を象徴する指標において、日本の存在感は一段と小さくなる恐れがある。
日本の予算作成の慣例では、一旦縮小された予算額の回復は極めて困難であることを考えれば,政府はいくらやむをえない事情にあるにしても、ODA関連予算を軽々に削減するべきではない。今回の震災に際して、日本はバングラデシュやネパールを始めとする最貧国の人々からも支援を受けたことを忘れるべきではない。たとえ自国が大災害を被っても、日本は先進国としての責務を怯むことなく果たしてこそ、好ましい姿となる。日本の一人あたりのODA負担額は、世界で20位以下であるのに対比して、小国オランダのそれは、世界第1位であり、オランダへの国際的評価は高い。ここで、日本は国際的な評判を落とすような行為は慎むべきだ。
次に、被災地住民の意識調査によれば、住民の約3割が、元の居住地域に戻ることを希望していないとされる。今後、もし被災地の住民が希望通りに行動するならば、東北の多くの地域は、人口が減少し、地域が元のように復興することは難しくなると予想される。3割の住民にしてみれば、他府県へ移住するという選択のほかに、海外に新天地を求めるという選択もあるかも知れない。政府・地方当局としては、このような住民の希望に対して、日本の国際化の流れの一貫として支援を惜しむべきでないと考える。
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