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2011-04-25 19:40
リビアへの「人道的支援」とは何か?その意味するところ
川上 高司
拓殖大学教授
リビアではアフリカ連合(AU)による停戦の調停が失敗し、相変わらず反政府勢力とカダフィ軍の戦闘が続いている。反政府勢力は装備も乏しく、素人集団なので、屈強なカダフィ軍に対抗できず、膠着状態に陥っている。そのため一般市民の巻き添えも増えて、戦闘は手詰まり状態である。欧州連合(EU)は、この状態に対処するために[地上部隊およそ1000人を派兵する用意がある]と表明したが、それとは別に各国が軍事的支援に動き出している。
NATOの空爆が効果を上げていないのは、アメリカが消極的であることが大きく影響している。コソボでも、イラクでも、主にアメリカが主導して軍事行動を引っ張り、それに各国がついていくという構図だった。今回、アメリカは控えめで、むしろフランスやイギリスが牽引役となっているが、決め手に欠けている。そのイギリスは「軍事顧問団を派遣する」と表明した。フランスは「反政府勢力との連絡将校を数名送る」という。イタリアも「10人程度の将校を派遣する」と表明している。いずれも少数とはいえ、派兵するということは、地上戦への扉を開きつつあることになる。NATO各国は、アフガニスタンでの任務を抱えて手一杯の状態で、果たして2方面の戦闘に対処できるのであろうか。
アメリカは地上部隊の派遣には否定的である。イラクとアフガニスタンの状況がいまだ未解決なことに加えて、対日震災支援として「トモダチ作戦」「ソウルトレイン作戦」などを行っており、米軍にはいまリビア問題に人手を割く余裕はない。オバマ大統領は、ヒトを出すかわりにカネとモノは出すつもりなのか、リビアの反政府勢力に対して2500万ドルの支援を申し出た。戦闘服や無人航空機の提供などである。無人偵察機とはいえ、いつでも空爆に使用できる。アフガニスタンやパキスタンでの無人爆撃機の活躍を見れば、使用されて民間人の死傷者数が増加すれば、反米感情の増加やカダフィ側の巻き返しの激化につながる可能性がないとはいえない。
アメリカも、ヨーロッパ諸国も、すでに「はじめの一歩」には踏み切っており、さらに軍事顧問団であれ、軍事支援であれ、「次の一歩」を踏み出したことも、間違いない。だが、「人道的支援」と銘打った以上は、簡単には引き下がれない。どんな深みが待っていようと、さらに「次の一歩」を踏み出していくしかないのである。
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