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2011-05-13 07:35
ささやかれる「問責」での参院先行説
杉浦 正章
政治評論家
内閣不信任案提出で煮え切らない衆院に業を煮やしてか、参院自民党内で首相問責決議先行説がささやかれている。問責決議なら野党だけでも可決可能であり、首相・菅直人退陣への導火線にしようというわけだ。早ければ5月下旬か、遅くとも6月上旬に可決させて、ムードを盛り上げ、最終的には衆院が内閣不信任案でとどめを刺すという戦略だ。菅は「問責には法的根拠がない」として居座るだろうが、問責を可決されて、逃げ切れた政治家はいない。問題は世論の反発が激しいかどうかであり、これを気にする公明党の動向も問題だ。「やる場合は、一挙に浮上させて可決に持ち込むしかない」と、自民党筋は漏らしている。
参院問責先行論は、菅が6月22日で通常国会を閉幕させ、2次補正を臨時国会で行う方針を固めたことから、対応を急ぐ必要がある、と焦燥感を伴って出てきている。12日は、この菅の「夏休みへの逃げ込み」策に対して、澎湃(ほうはい)と反対論がわき起こった。自民党の派閥の長が一斉に反対したのだ。伊吹文明が「少なくとも被災者の生活支援は、今の国会ですぐに手を打つべきだ。これすらやらずに国会を閉じることは、許されない」と述べれば、麻生太郎は「これはまさに『政治空白』だ」。町村信孝は「『国会は休んでます。菅総理は海外で華やかな外交をやっています』ではおさまらない」と猛反対。
参院議長・西岡武夫も「2次補正は復興会議の結果を待ってとなると、何のめに内閣、国会があるのか」と政権の本末転倒を指摘。「首相としての資格を改めて疑う」と菅の資質論にまで踏み込んだ。
西岡は、4月下旬に鳩山由紀夫から「参院で問責を考えて欲しい」と持ちかけられて、言を左右にしたが、12日の発言は、問責も辞さない方向へ踏み込みそうな気配を見せている。参院に人脈のある自民党代議士・塩崎恭久もメディアで「不信任案の提出は、党内では議論が分かれるところだが、5月中に参院での問責決議案の提出はあり得る」と問責先行説をほのめかしている。ささやかれている問責戦略は、問責を可決しても、大震災対策を考慮して参院審議は粛々として行い、世論の反発を回避するのが眼目。震災対策などの法案も通すべきものは通すことを基本としているようだ。菅への不支持だけを“浮き彫り”にして、菅への質問も行って、政治的に追い詰めようというわけだ。菅が辞任しない場合には、民主党内の動向を見極めつつ、衆院での不信任決議の可決に持ち込む機会をうかがうというもののようだ。
問題は、問責で菅が辞めるかどうかだが、政権に固執する菅は、1976年の「三木降ろし」で抵抗した首相・三木武夫そっくりだ。やはり連休明けに浮上した倒閣の「椎名工作」に端を発した動きは、自民党内で高まりを見せたが、三木は辞めず、結局任期満了選挙で敗退して、12月に退陣した。半年かかったのである。しかし、問責を可決させた場合は、話は別だ。冒頭述べたように、問責可決を受けて最終的には辞任に追い込まれなかった政治家はいないのだ。首相に対する問責も、2008年に福田康夫は3か月後に辞任。2009年の麻生太郎は2か月後に辞任に追い込まれている。時間はかかるが、退陣を担保する手段としては問責が最適だ。逆に言うと「これしか手がない」かも知れない。
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