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2011-06-15 07:32
菅は原発再稼働に向け、地元説得責任を果たせ
杉浦 正章
政治評論家
レームダックの首相・菅直人に期待するものは何もないが、ただ一つ早急に自らの手で処理してもらいたい問題がある。それは「浜岡発の電力危機」回避だ。菅による「浜岡停止」を契機に、全国的に停止原発の再稼働ができず、7月の電力危機が東電だけでなく全国に波及する流れとなっているのだ。事態は国民や企業の短期的な困難にとどまらず、このままなら中長期的にも産業空洞化と“原発大不況”となることが避けられない情勢だ。大震災の復旧・復興にも確実に影響を及ぼす。菅は、いまは再生可能エネルギーにうつつを抜かしているときではない。直面する危機を無視したパフォーマンスは、もうやめてほしい。一刻も早く地方に出向いて、地元自治体と住民に説明責任を果たし、再稼働に持ち込むべきだ。
民主党政権の大向こううけ狙いは、鳩山由起夫の「温室ガス25%削減」と菅の「浜岡停止」が象徴しているが、温室ガスは「机上の空論」と鳩山が馬鹿にされるだけに過ぎなくても、「浜岡停止」は生活と産業基盤を直撃している。現在13か月ごとの定期検査で原発が次々に停止しているが、再稼働が地元の反対でできなくなっているのだ。このままでは、1年以内に国内の54基の原発がすべて止まり、産業と国民生活は甚大な影響を受ける。2012年度の毎月の標準家庭の電気料金は、平均で1049円上昇し、6812円になる。日本経済研究センターは6月14日、工場の稼働率低下などで年間7.2兆円の経済損失が発生すると試算した。貿易収支は2011年度から赤字に転落し、海外からの利子や配当の受け取りを含めた経常収支も2017年度には赤字に転じると予測している。関西電力は15%の節電を要望、とても東に電力を融通できる状態ではなくなった。
ただでさえ産業の空洞化が叫ばれる中で、原発再稼働は喫緊の課題となっっているのだ。このままでは豊富で安い電力を求めて、さらなる企業の海外移転が進展せざるを得ない。原因の全てが、菅が明確な根拠のないまま、地震発生の可能性だけを理由に浜岡を止めたことにある。さる4月末には、全ての原発が安全基準を達成、再稼働へと動き始めていたにも関わらす、菅が5月6日に「浜岡停止」を突如要請したことが、まぎれもなく再稼働ストップに直結したのだ。地震の可能性のない原発などは、この列島には存在せず、かえって地元の不安感をあおってしまった。菅は後になって「安全性が確認されれば、稼働を認めていくことになる」と述べているが、既に手遅れになりつつある。地元知事らの懸念は高まる一方であり、反原発の動きを各地で加速させる事態となった。
九州電力の玄海原発2、3号、関西電力の高浜1号などは定期検査を終えて、本来なら3、4月に運転再開の予定だった。中国電力も来年3月に予定していた島根3号の運転開始を延期した。再稼働が宙に浮いた原発は、6電力会社で計11基に及ぶ。こうした事態を受けて、閣内や経済界からも憂慮の声が上がっている。財務相・野田佳彦は14日、「国としてしっかりとした安全基準を示し、原発再稼働へ知事らの背中を押さないと、全国が電力不足になりかねない」と警鐘を鳴らした。経済同友会代表幹事の長谷川閑史は「電力不安で日本企業は事業計画を立てられず、景気回復どころではない。国家が責任を持たないと電力供給問題は打破できない。原発の再稼働をぜひやってもらいたい」と、「原発大不況」の可能性を指摘している。
事態は7月の電力事情を考えると「待ったなし」の段階に入った。かくなる上は、菅は自らまいた種を自分の手で刈り取る責任がある。浜岡原発を自身の要請で止めた菅は、原発再稼働問題でも自ら地元に出向き、自治体や住民の理解を求めて、とりあえずの再稼働にこぎ着けるべきであろう。菅は、電力危機を回避する責務がある。海江田自身も「菅の地元説得を望む」との発言をしている。しかし菅は「浜岡パフォーマンスの成功」に味を占めて、周辺に「脱原発で行く」と、懲りない発言を繰り返し、事態を直視する様子は見られない。実に度し難い首相である。もちろん中長期的な課題として再生可能エネルギーに取り組むべきことは誰も否定するものではないし、常識だ。それが可能になるまではより強化した原発で対応せざるを得ないのが、我が国の産業構造なのだ。イタリアの国民投票で原子力発電所の再稼働に9割超が反対したが、欧州は全体にグリッド(送電網)が完備しており、フランスから買えるのだ。脱原発のドイツも同様だ。経団連会長・米倉弘昌は14日、菅について、「お辞めにならねば日本没落だ」と述べているが、立つ鳥跡を濁さずだ。延命のための思いつき政治に専念するより、やるべきことはやった上で辞めてもらいたい。
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