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2011-08-24 07:21
協調か激突か:土壇場の民主代表選
杉浦 正章
政治評論家
辻回しでひっくり返りかねない「欠陥山鉾」だが、民主党最後の切り札であることは確かだ。前外相・前原誠司の代表選立候補は、政商・稲森和夫も巻き込んで、土壇場の展開を見せ始めた。本命登場で、かしましかった他の候補はかすみ、焦点は、舞台裏の“稲森調停”で小沢一郎が前原を推すかどうかだ。小沢が前原を推せば、“決まり”だ。推さずに財務相・野田佳彦を推せばいい勝負になる。前原が8月23日朝、選挙区・京都のスポンサー稲森に立候補に先立って早々と会いに行ったのはなぜかと首をかしげたが、午後、稲森が小沢を呼んで会談したので分かった。前原は明らかに稲森に小沢との調停を依頼したのだ。稲森は財界人では数少ない民主党系で、財界本流には評判が悪い。もっとも最近では2代続いた政権の体たらくに、「落胆した。政権交代も民主主義の結果であるが、色んなことが起きて、歳もとったので、今後は党への支援には距離を置き静観する」と述べていた。民主党に深入りしすぎたことへの反省だ。
しかし、前原にしてみれば、新進党時代から小沢と親しい稲森に小沢を説得してもらい、一挙に勝負を決めたい腹なのだろう。稲森は前原に「挙党態勢を作るよう努力すべきだ」と述べ、反小沢的な言動を慎むよう求めている。小沢が稲森の調停にどう反応したかはやぶの中だが、前原立候補で代表選の構図ががらりと変わった。売名目当ての泡沫候補らは推薦人20人の確保すらままならぬ状況となり、野田、海江田万里、鹿野道彦くらいしかまともな対立候補がいなくなった。まず野田は、前原に蹴落とされつつある状況に陥った。政局を読めぬ大連立発言などが災いして、主流派の人心が去ったのだ。推薦人集めにも汲汲(きゅうきゅう)としている始末だ。小沢の支持が得られなければ、前原で候補者“一本化”の話しも現実味を帯びてくる。
一方、閣僚辞任を先延ばしにしてきた海江田は、23日ついに「辞任しない」方針を明らかにした。衆人環視の中での号泣といい、自分の進退すら決断できない優柔不断さといい、事実上指導者不適格の烙印が押されつつある。小沢が「辞めれば、首相になれるのに」と漏らしてから1か月を経ても辞めず、揚げ句の果ては「辞めるのやめた」では、よほどのことがなければ見放される。鹿野は黙っていることだけで小沢の支持を得たい戦術のように見えるが、物欲しげでいじましい。小沢と会っても、冷たくあしらわれたようだ。こうして対立候補らが三者三様に窮地に陥っている。小沢の選択肢はますます広がり、「院政」にむけて「高く売る」政治を展開している。小沢が前原以外を推すなら、まともな候補は野田しかいまい。反小沢の急先鋒だったが、現在は世間体も気にせずに小沢の党員資格停止処分の解除を示唆し続けている。哀れさすら感じさせるが、小沢が野田を推せば、主流派は一挙に分断されることになり、前原優勢の状況は一変しかねない。
その前原を小沢が推すかどうかだが、小沢は裁判を控えて時の首相を敵に回したくないことだけは確かだ。裁判が最大の弱みなのだ。新事実が出れば、当然国会での追及も始まる。野党と一緒になって証人喚問されてはたまらないのだろう。前原が「小沢史観のようなものからは脱却しなければならない」と、親小沢・脱小沢に拘泥しない体制を目指しているのは、小沢に対するエールだろう。結局は人事での妥協が焦点となり得るのだろう。小沢サイドは、まさか「小沢幹事長」は要求しないだろうし、裁判でシロの判決が出ないと、小沢自身の人事は無理だ。従って閣僚・党役員人事での小沢グループ起用が裏取引の焦点となろう。いずれにせよ、有資格議員398人の過半数200人を確保することは並大抵ではあるまい。はやくも誰も過半数をとれずに1位と2位の決選投票説が台頭している。その場合でも前原が1位か2位になることは確実だろう。2・3位連合で1位を覆すことも可能だ。
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