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2011-09-01 07:26
はやくも「解散綱引き」が始まった
杉浦 正章
政治評論家
自民党総裁の谷垣禎一が声高に早期衆院解散を唱えはじめ、解散回避が基本の首相・野田佳彦との「解散綱引き」が早くも始まった。9月1日の党首会談などを経て、次第に解散での対立の構図は鮮明となろう。しかし、野党は、公明党が例によって野田に接近しようとしており、加えて世論が野田とは当分ハネムーンに入った。早期解散の突破口を見つけるのは容易ではないが、水と油の党内抗争を抱え、政権のほころびは意外と早い。内閣支持率は当面高くても、日教組のばりばりで、親小沢の幹事長・輿石東では、民主党の支持率は上がるまい。もっとも谷垣が「一刻も早く解散」を唱えるのは“掛け値”であり、本当の解散風は、臨時国会末から吹き始めて、来年度予算案審議が佳境を迎える3月頃に吹きすさぶだろう。民主党が早くも逃げの姿勢だ。野党が9月9日からの臨時国会招集を主張しているのに対し、民主党は9月下旬に持ち込みたい考えで、大震災対策が叫ばれる中、1か月の空白が出来そうだ。
こうした中で、自民党は早期解散を合い言葉に政権を追い込む姿勢を固めた。谷垣は「一刻も早く解散に追い込んで、国民の信を問い、政権を奪還する。この目標は微動だにすることがあってはならない」と意気込んでいる。自民党は菅政権で2度解散の絶好のチャンスを逃している。一つは、大震災直前で、外国人献金で菅を解散か総辞職かと言う場面まで追い込んだが、震災が不可能にした。次は、菅が狙う「脱原発解散」を逆手に採った8月解散だったが、菅が戦略の破たんに気付いて急速にしぼんだ。今度は3度目の正直だ。確かに「2年間に3人の首相が交代して国民の信を問わないのでは、政権の正統性が問われる」という自民党の主張は、マスコミの主張とも合致している。しかし野田は「解散で政治空白をつくれる状況ではない。解散はそもそもできない」と突っぱねている。野田は「首相の解散権を縛る話でもない。いろんなことが起これば、解散はあり得る」とも述べているが、これは本人の意志と反した“つけたり”だろう。野田の戦略は、2代続いた政権の体たらくを立て直して、党の支持率の回復を待って、解散に踏み切るところにあり、現段階の解散は自殺行為に等しいのだ。
自民党戦略にとっての問題は、公明党が得意のコウモリ作戦で野田にすり寄りつつあることある。代表・山口那津男は「選挙をやれ、解散しろという政党がある。でも、一番先にやらなければいけないことは、復興のために政治の力を合わせることだ」と自民党をけん制している。しかし、解散に関する公明党の主張ほど当てにならないものはない。「今年初めは統一地方選挙があるから解散反対」と述べていた山口自身が、大震災直前に菅内閣を追い込めると判断するや、総選挙と地方選挙のダブルを是認しだしたのだ。この党は、解散に関しては状況次第でくるくる変わる。問題はマスコミの動向だが、社説は、読売が「自公両党は、衆院解散・総選挙に追い込むより、日本経済の再生を優先すべきだ」と主張しているほかは、全紙が解散指向だ。朝日は「野田氏は国民の信任を直接は得ていない。その正統性の弱さを忘れてもらっては困る。民意を問うために、政策実現の実績を積むとともに、新しいマニフェストづくりを急がねばならない」と主張。毎日は「衆院選を経ず首相を2度にわたり交代した以上、できるだけ速やかに民意の審判を仰ぐことが必要だ」、産経も「やはり早期解散こそ筋だ」と早期解散論だ。
こうした論調が正面切って出てくるのは、政権とマスコミのハネムーン期間100日が過ぎてからだろう。一見すきがないように見える野田政権も、ほころびは幹事長・輿石あたりから目立ち始めるだろう。輿石は自らの仕える「ご主人様」である小沢一郎の党員資格停止処分の撤回発言を繰り返し、8月31日も「元代表にもこの難局に参加してほしい。そのことにみなさん異論はないと思う」と、全党を統括しなければならぬ幹事長らしからぬ発言をしている。輿石は小沢の“どつぼ”にはまっているのだ。まだ、マスコミが発言をさせるだけさせて、手ぐすねを引いて叩こうとしていることに、愚かにも気付いていない。この調子では民主党支持率の野田内閣支持率への連動など期待できまい。従って、自民党の早期解散戦略は成り立ちうるのだ。マスコミとのハネムーンも、みんなの党代表・渡辺喜美が「2年で3回目のハネムーンなんて一体あるのか」と批判している通り、爆笑ものだ。臨時国会を何とかやり過ごせても、通常国会は参院のねじれが再び作用して、予算関連法案をめぐる攻防が激化し、解散は一触即発のモードに入るだろう。
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