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2011-09-15 15:26
イスラエルに対し、堪忍袋の緒が切れたトルコとアメリカ
川上 高司
拓殖大学教授
昨年5月、トルコのガザ支援船がイスラエル海軍の襲撃を受けてから1年経つ。国連は調査委員会を設けて事実の検証を進めてきたが、9月初旬にその報告書がニューヨーク・タイムスにリークされ、報告書の内容に、トルコは怒り心頭に発している。エルドガン首相はイスラエル大使を国外追放し、国防産業の協力関係などあらゆる軍事的な関係をシャットダウンしてしまった。
この報告書では、イスラエル海軍の襲撃は「やりすぎであり、妥当性を欠く」とし、「イスラエルはトルコに謝罪するべきである」としつつも、イスラエルによる海上封鎖は「国防上合法である」と結論づけた。だが、いまだイスラエルはトルコへの謝罪を拒否しており、これ以上「東地中海でわがもの顔されては、我慢できない」とエルドガン首相はイスラエルとの関係を絶ち切ってしまった。エルドガン首相はイスラエルを「この地域の鬼っ子」と非難して、怒りはエスカレートする一方である。そんなイスラエルとトルコの外交を、本来ならアメリカがすかさず修復しようとするのであろうが、アメリカもイスラエルには不満を持っているようである。
ゲイツ元国防長官はイスラエルを「恩知らず」と言い切って、アメリカとイスラエルの冷え冷えとした関係を隠そうともしない。ゲイツ氏は国家安全保障閣僚委員会で「アメリカは長年軍事的にもイスラエルに協力し助けてきたが、イスラエルからは全く見返りがない。ネタニヤフ首相の外交政策はイスラエルをグローバル社会で孤立させている」と厳しく評し、長年のイスラエルへの不満を披露した。さらにゲイツ氏だけでなく、オバマ政権もまた不満を増幅させているようである。
ネタニヤフ首相は「国防は国益であり、国民の要求である」と反論しているが、イスラエルでは先日「100万人デモ」が起こり、イスラエルの政治が外交や国防に偏っていて、経済問題が停滞していることへの不満が爆発した。経済改革を求めてイスラエルでも人々は声を上げ、政権を揺さぶっているのが、現実である。アラブで民主化運動が起こり、もはや自国の国防だけを追求していくばかりでは、困難な時代になりつつある。ギブもあってこそ、グローバルであり、良くも悪くもすべての面で依存しあっている時代の動きを読み切れないと、もはや生き残れないのかもしれない。
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