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2011-10-09 13:37
除染のための土壌剥離は環境破壊の危険がある
松井 啓
元駐カザフスタン大使
土壌は無機物の固まりではない。土壌剥がしは表面の自生植物やその下に生息している、蟻などの昆虫とその幼虫や卵、ミミズ(進化論のダーウィンが肥沃土壌の形成者として注目していた)、モグラ、細菌、かび類等々多くの生物を死滅させ、保水性を低下させ環境を激変させかねない。
土壌は何百年にも亙って形成されてきた腐葉土や昆虫や微生物の微妙なバランスにより成り立っているので、これを一気に剥ぎ取ることはその生態系を崩し、生物環境を破壊し自然環境を激変しかねないので、その与える影響について土壌学者、昆虫学者、菌類の専門家などの意見を良く徴して、校庭や道路などの必要最小限に留め、森林などには極力手を加えずに自然の浄化作用、回復力に待つべきである。
更に、除染で剥ぎ取った土壌の処理の方法も決まっていないのに汚染土壌を集積・堆積するのは危険でさえある。また、そのための膨大な経費捻出の見通しも立っていない。長期的、安全な処理対策を充分に検討し、そのための工程表を見極めてから取りかかるべきである。
たしかに原発事故により正常な日常生活を奪われている地域住民の苦痛は大きなものであるが、残念ながら広島・長崎の核兵器、チェルノビル原発事故などの経験はすぐには役立たないであろう。将来展望を欠いた性急な土壌の移転は、更に何十年にもわたる不幸を生むことにもなりかねない。汚染土壌の引き受け手を探すよりは、地域住民の引受先(住居、就職、就学等)を手当てする方が人道的配慮である。
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