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2011-12-01 13:44
政治とスポーツの関係を改めて考える
船田 元
元経済企画庁長官
政治とスポーツは一見、縁のなさそうな関係に思えるが、案外近いところにある。よい例は1980年の「モスクワ・オリンピック」である。当時は世界が東西対立の真っ只中で、アメリカとソ連が厳しく対立していた。オリンピックの直前にソ連が自国の防衛のためと称して、アフガニスタンに侵攻した。これに西側諸国が激しく反発して、その多くの国が「モスクワ・オリンピック」をボイコットする事態を招来した。一生をかける思いで、ようやくオリンピック出場を獲得した日本選手が、無念の会見をした光景が今も思い出される。
さらに歴史を遡ると、国交のなかった中国と日本が卓球を通じた交流を積み重ね、遂に国交回復を実現した「ピンポン外交」は、とても有名な話である。先日のワールドカップサッカー・アジア3次予選において、ピョンヤンで行われた日本と北朝鮮の一戦も、まさにスポーツが政治に翻弄された典型的な例になってしまった。両者は互角に戦ったが、一瞬のスキに北朝鮮がゴールをものにして、日本はこのシリーズで初めて敗退した。試合結果は素直に認めざるをえないが、試合環境は「アウェイ中のアウェイ」であったようだ。まず選手の入国手続きが4時間もかかるという非常識な長さだった。日本からのサポーターもわずか150人に制限されてしまった。
そして極め付きは、君が代が演奏されている最中に、北朝鮮の観衆はブーイングでかき消してしまったことだ。FIFAの公式試合では、両者の国歌を試合前に演奏し、それを選手と観衆は尊重するというのが、国際的な常識になっている。北朝鮮にはその常識が通じないようである。世界の平和構築とは真逆な行為である。これらの行為が日本代表選手に精神的なプレッシャーを与えたことは、想像に難くない。後味の悪さを味わったのは、私だけではないはずだ。
「政治とスポーツは切り離すべき」という意見は、理想ではあるが非現実的である。ならばせめて、かつての日中間の「ピンポン外交」のように、政治とスポーツがよい関係であって欲しいと切に願う。
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