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2011-12-06 06:58
増税と閣僚更迭の二正面作戦を避けた野田
杉浦 正章
政治評論家
さすがの野田も、かつての大日本帝国のように中国戦線と太平洋戦線の二正面作戦ではたまらないとみたのであろう。野田は消費税増税と防衛相・一川秀夫更迭のうち、まず消費税を正面に据えたのだ。閣僚更迭は後回しにしたのであるが、いずれにしても「引くも地獄、進むも地獄の様相」を帯びる。一川と消費者相・山岡賢次は、当分“死に体”のままさらしておくしかないのだろう。先週末からマスコミが一川の問責決議前の辞任説で突っ走っていたが、結果は間違った。政調会長・前原誠司が「少し勉強不足が過ぎる」言ったことなどがきっかけだが、野田の党内戦略から言えば、もともと無理がある。野田はかねてから消費増税に関して、年内に素案をまとめる方針を明らかにしていた。しかし、小沢一郎が目の色を変えて反対しており、幹事長・輿石東も内心では消費増税反対とみた。野田は消費増税では、その小沢に対して真っ向から対決せざるを得ないのだ。
12月5日に野田は「不退転の決意」を表明した。消費税率10%への引き上げ時期や税率を明記した「素案」を年内をめどに取りまとめるよう政府・与党に指示したのだ。年末に向けては、この超重要課題の処理で、閣僚更迭などやっていられないのだ。一方で、いくら暗愚でも一川と、「疑惑がスーツを着て歩いているような大臣」(自民党・稲田朋美)山岡賢次は、よりによって小沢グループだ。とりわけ一川は輿石が推した人事であり、山岡は小沢が推挙している。その2閣僚を直ちに切ったら、間違いなく小沢は臨戦態勢に突入する。今のところは、野田に寄り添っている輿石も離反するだろう。したがって、野田は、問責決議が可決される前から一川を罷免しても、何の得にもならないと判断したのだ。それより、事態の成り行きに任せた方がよいとみたのだろう。
折から自公両党は、一川に加えて、山岡の問責決議案も国会最終日の9日に提出する態勢を整えた。提出されれば可決となる流れだ。通常、辞任をしなければ可決と同時に参院の審議はストップするが、野田は国会を延長をするつもりはないから、両相共におそらく辞任しないまま、宙ぶらりんの状態で推移させるのだろう。それに現段階で辞任させれば、野田の求心力ががたがたになりかねず、消費増税とりまとめにも影響する。ここは何としてもしのいで、野田としては、消費増税素案を年内にまとめ上げるために、全力を傾注したいのだ。しかし過去5人の首相と閣僚は問責を受けて、いずれも“死に体”となり、結局は辞任に追い込まれている。とりわけ消費増税の素案がまとまれば、消費増税準備法案作成に向けて、野党との交渉をテーブルにのせなければならない。したがって通常国会まで2閣僚を辞任させないまま推移させるわけにはいくまい。去年の仙谷由人、馬淵澄夫の例とそっくりの事態に陥るのだ。
前首相・菅直人と同様に、小幅の内閣改造を断行するか、更迭・補充の形を取るかは別として、「暗愚と疑惑」の2人は切られる方向であろう。一川は精神的にぷつんと切れて、自ら辞任するかも知れない。はっきり言えば野田は、小沢を意識して、“外圧”を活用して2閣僚を辞任させるわけだ。しかし、ドミノ倒しの2閣僚辞任となれば、政権に与える影響は大きい。菅の場合は、あわや3月危機で退陣か解散かという事態が待ち受けていたが、大震災が発生して九死に一生を得た経緯がある。野田の場合は、当然任命責任を追及されることになる。閣僚への問責可決で首相問責で追い込まれる“下地”が出来、次第に解散・総選挙を視野に入れざるを得なってくるだろう。
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