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2012-01-16 06:54
野田は新聞論調と“同期”戦術
杉浦 正章
政治評論家
消費増税に「政治生命を賭ける」という首相・野田佳彦の姿勢は、その弁舌と相まって極めて説得力が出てきた。消費税推進論のマスコミがはやしている。これに比べるとばかの一つ覚えのように「マニフェスト違反」を繰り返す自民党総裁・谷垣禎一の主張の何と精彩に欠けることか。ここは長年政権を担当した政党として「器量・風格」を示すべき時だが、そのかけらもない。しかし、各社の世論調査による内閣支持率は、横ばいか下落。やはり一般大衆は古今東西を問わず、増税で懐に手を突っ込もうとする為政者を理屈抜きで受け入れ難いのだ。最近の野田の発言は、新聞の社説と“同期”している。顕著な例が、朝日が1月11日付で「捨て身で野党呼び込め」との見出しで「言葉にいくら力を込めても、現実は動かない。衆参ねじれのもと、政権与党は、国民の支持を求めて捨て身の対応をするしかない」と主張したのに答えるかのような、14日の“捨て身”発言。
「私の政治生命をかける。民主党政権がうんぬんではない。この国を守るため、未来を残すために、一体改革は貫いていく」と力んで見せた。最近の大新聞の社説は、マニフェスト違反一点張りの自公両党に批判的なものが多い。読売も5日付で「消費税を政争の具にするな」と、小沢一郎と野党の両方を叩いている。野党と党内小沢グループの挟撃にあっている野田にしてみれば、地獄に仏のように見えるのだろう。野田はこの新聞論調に気づいているだけ立派だが、野党に至ってはどこ吹く風のなりふり構わぬ主張を繰り返している。谷垣が税と社会保障の与野党協議について「嘘の片棒を担ぎ、事前の談合で解決することなど受け入れられない」と門前払いをすれば、みんなの党代表の渡辺善美に至っては「増税に狂う増税暴走内閣」と口汚くののしっている。そこには、大局的な判断などはかけらもない。むしろ解散・総選挙を目指した政局への思惑が露骨であり、野党がこれほど卑しげに見える時期もめづらしい。
しかし、野田にとっての問題は、社説が“支持率”を稼いでくれないし、国会対策もやってくれないことだ。改造後の世論調査では、とても政権浮揚などとはほど遠い結果が出た。朝日が前回の31%から29%とついに20%台に割り込んだ。読売も42%から5ポイント下がって37%となった。共同通信も横ばいだ。何故かと分析すれば、おそらく消費増税が足を引っ張っているのだろうと推察できる。朝日の調査では賛成は34%で、反対の57%を大きく下回っている。消費税は次の選挙で争点となるが、このままの比率でいけば民主党は大敗だ。加えて改造への評判がぱっとしないのは、防衛相に田中直紀を起用したことだろう。「素人の次に素人」と永田町で驚きをもって迎えられている評価が、国民レベルまで伝搬した。読売の調査によると、岡田克也の副総理起用は52%が評価したが、田中は19%の評価にとどまっている。
野田は「輿石命」の田中を幹事長・輿石東が「ういやつじゃ」とばかりに推薦したのを、そのまま受け入れざるを得なかったのだろうが、どうも野田は、人事でポイントを外しがちだ。 いずれにせよ野田は、いまのところ新聞論調だけを頼りにせざるを得ないようである。新聞論調が消費税協議に乗ってこない野党に、もっと強力な矛先を向けるようひたすら念じているにちがいない。しかし、いくら批判されても、解散の好機とばかりに、はやりにはやってしまっている野党を、新聞論調が叩いても限界があるだろう。野田は14日のテレビで解散を聞かれて「衆院解散以前に、まず一体改革と、自分たちが身を削る行政改革、政治改革を実現していく。それができるか、できない暁には、いろんな判断があるかもしれないが、まずは野党に呼びかけることからスタート」と微妙な発言をしている。「いろいろな判断」とは解散の決断か、話し合い解散の決断が考えられるが、結局問題の落ち着く先が分かってきたようでもある。野田の好きな新聞論調も、与野党激突を経れば、話し合い解散による決着に傾斜するだろうと予測する。
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