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2012-01-19 06:54
民主、「80削減」で公明に“逆秋波”
杉浦 正章
政治評論家
衆院比例区80議席削減案に一番影響を受ける中小政党が激怒しているが、あえて反発を承知で民主党が打ち出した狙いはどこにあるか。おそらく公明党抱き込みにあるとみた。公明党が一番嫌がる80議席削減を打ち出しながら、途中で妥協して野党を揺さぶり、消費増税協議に引き込む。それが不可能なら、不成立は野党のせいにして、解散・総選挙になだれ込む。よく考えた定数是正問題の“活用”だが、パフォーマンスの馬脚を現すようでは、鳴り物入りで国対委員長に就任した城島光力もたいしたことはない。とにかく現行小選挙区比例代表並立制のまま80議席を減らせば、比例区当選が公明、共産両党は半減。社民党に至ってはゼロになる。怒るのはもっともだが、城島国対の狙いは別にある。まず野党分断だ。自公両党はいまや解散・総選挙で足並みを揃えて蜜月状態にあるが、公明党は体質的に“きれいごと”へと流れる傾向があって、度々自民党を裏切ってきた。
今回も民主党から社会保障と税の一体改革で与野党協議を持ちかけられれば、よろめきかねない。現に1月18日の自公幹事長会談でも井上義久が「協議に応じてもいい」となびき、慌てて石原伸晃が口止めする場面があったと言う。民主党はそこを見極めて、公明党に一番きつい球をまず投げたのだ。もちろん城島も、公明党が怒り心頭に発する事を計算に入れてのことだ。と言うのも、このままでは与野党協議に入るめどなど全く立たない。消費増税という大魚を網にかけるために、水面を叩いて底にへばりついている魚を浮上させようとしているのだ。案の定公明党は、代表・山口那津男が「あまりにも独断が過ぎる。協議の土俵を自ら壊すような強引な進め方はするべきではない」と憤っている。しかし民主党にとっては、これで終わっては元も子もない。その「妥協策」は公明党の主張する小選挙区比例代表連用性の導入だ。
今のところの民主党案は、現行制度のまま80議席減らす方針だが、これは圧倒的に民主、自民の2大政党に有利となる。これに対して連用性は、比例の議席を割り振る際に小選挙区で獲得議席が少ない政党に優先的に配分する方式だ。試算によると、公明、共産両党はかえって議席増につながるのだ。民主党幹部は「連用性が切り札になる」と漏らしている。“切り札”をほのめかされたら、公明党が“浮気の虫”を押さえられなくなって、自民党に「ちょっとだけね」とばかりに、民主党に会いに行くことも予想される。国民新党代表の亀井静香も「小政党に優先的に議席を配分する連用性に変えるべきだ」と主張しており、前向きだ。しかし、本格的な選挙制度改革がこの“急場”で成し遂げられるかどうかは微妙な上に、周知期間が必要となるから、次の衆院選挙には間に合わないだろう。従って公明党を引き込む道具とはなっても、実現性は乏しいとみなければなるまい。
そこで民主党が考えている最終作戦が、数を頼みに衆院で合計85人削減法案を可決させる強行突破策だ。参院に送付すれば、参院は野党が多数で成立は不可能と言ってもよい。そのままたなざらしで、解散・総選挙になだれ込み、選挙で「定数削減にまじめな民主党。削減をしない悪い野党」を訴えて、有利に導こうという魂胆だ。誰が描いたか知らないが、巧みな硬軟両様のシナリオだが、ここでも事業仕分けと全く同じパフォーマンスがまたまた露呈している。「定数是正だ。公務員給与削減だ」とかしましい「自らの身を切れ論」に迎合しての“演技”だが、1000兆円に達する赤字や、消費税5%アップの巨額な歳入に比べれば、いずれも雀の涙ほどの効果でしかない。「身を切れ論」は本質的には消費増税へのアリバイ作りなのだ。身についたパフォーマンス体質は、民主党政権から死ぬまではがれないのだろう。いずれにしても、80議席削減の裏を読まれるような国対では、国会運営も行き詰まりが不可避だ。それにこれほど国民を馬鹿にした国会対策も珍しい。もともと実現不能と分かり切っているからだ。
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