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2012-01-24 12:11
北朝鮮とミャンマーの関係解明に努めよ
高峰 康修
日本国際フォーラム客員主任研究員
米国とミャンマーの関係改善は、いよいよ揺るぎない流れとなってきた。1月13日に、オバマ大統領はミャンマー政府が500人以上にのぼる政治犯を釈放したことを歓迎する声明を発表し、両国の関係正常化に向けた新たな措置をとるよう指示した。クリントン国務長官は、政治犯釈放に加えて連邦議会補選を4月1日に実施するとの決定、カレン族などの少数民族との関係改善を評価し、ミャンマーに大使を派遣する手続きを開始すると発表した。米国はミャンマーの軍事政権による人権弾圧を理由に、1988年に両国の外交関係を臨時代理大使級に格下げし、さらに1990年には召還している。
一方、ミャンマーの人権問題に対して一貫して強硬な姿勢をとり、対ミャンマー経済制裁で議会をリードしてきた共和党のマコーネル院内総務が、1月15日からミャンマーを訪問し、17日にはミャンマー政府高官と会談した後、ミャンマーの改革は本物であると高く評価し、改革が進めば米国の対ミャンマー経済制裁を見直すべきであると述べた。クリントン長官は対ミャンマー経済制裁解除について、ミャンマーの民主化改革のさらなる前進が必要であるという立場を示していたが、それとほぼ歩調を合わせた形となる。そして、対ミャンマー強硬派であったマコーネル氏が制裁解除について言及したことの意味は極めて大きい。
米国がその国是である自由・人権・民主主義にこだわって対ミャンマー制裁を実施してきたことは、理解できなくはないが(とは言うものの、対ミャンマーだけ過剰に厳しいというダブルスタンダードはいただけない)その結果、地政学的に重要なミャンマーを対中依存に追いやってしまったのは、やはり愚策であったと言わざるを得ない。それが正しい方向に急速に転換されつつあることは、歓迎すべきことである。しかも、昨今の米=ミャンマー関係改善の前提たるミャンマーの民主化改革は自発的なものであり、経済制裁の解除を通じて外国からの投資を増やして対中依存を転換したいというのも、これまたミャンマー自身の選択である。それゆえ、単にミャンマーを対中包囲網のコマの一つとして利用するというのとは異なり、確固たる基盤に基づいたものである。
ただ、クリントン長官も指摘していたことだが、ミャンマーには北朝鮮との不透明な軍事協力や、国連の核不拡散体制への非協力的な態度という問題が残っている。制裁解除の過程でこれらを解明していかなければならず、制裁解除一辺倒というわけにはいかないことも間違いない。我が国にとっては、北朝鮮の核開発に加えて、北朝鮮による邦人拉致事件という重大な案件があり、ミャンマーと北朝鮮の不透明な関係を明らかにしていく過程で情報収集に努める必要がある。安倍晋三元総理はミャンマーを訪問してテインセイン大統領と会談したが、その際に、北朝鮮問題についてミャンマーの協力を求めた。その発想は悪くないが、こちらは経済支援を強化する立場にあるのだから、協力要請ではなく注文をつけるというスタンスで臨んでもよかったのではないかとも思う。いずれにせよ、ミャンマーと北朝鮮の関係解明という点において、我が国は独自に対処するのはもちろんのこと、米国との連携も重視し、情報交換していくことが肝要である。
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