米プリンストン大学のAaron L. Friedberg教授の最新の著作、A CONTEST FOR SUPREMACY は注目に値する。米国が有利な対中バランスを維持するための同盟強化を怠れば、アジア諸国に米国による安全保障への信頼感が損なわれ、対中融和政策への傾斜が強まると警鐘を鳴らしている。教授によれば、米国の対中政策はエンゲージメント(関与)とコンテインメント(封じ込め)の間を揺れ動き、時には交じり合ったアプローチをとってきた。オバマ政権の初年(2009年)には関与政策の強化を狙ったが失敗、2010年には人権問題などで強腰の「よりバランスのとれた戦略」へと転換した。その具体例が尖閣諸島沖の中国漁船による巡視船への体当たり事件や、南シナ海ほぼ全域の主権を主張してフィリピン、ヴェトナムなど周辺6カ国との紛争を激化させた中国への厳しい対応である。