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2006-10-11 14:47
北朝鮮の核実験
坂本正弘
日本戦略研究フォーラム副理事長
北朝鮮は10月9日ついに核実験に踏み込んだが、更なる追加実験の可能性が指摘されている。北朝鮮の状況、意図を完全に把握出来ないが、広島・長崎を経験した日本国民は、今、また、北の核の脅威にさらされるというおぞましい事態である。北朝鮮が2003年2月プルトニューム加工を再開した時点で、時日を経れば経るほど、核開発が進み、日本及び東アジアへの重大な脅威となるとことは明らかであった。日本戦略研究フォーラムは2003年5月、訪米を控えた小泉総理に、現在断固たる措置を執らないと、将来、計り知れない禍根を残すという提言をした。米国では当時、ヨンビョン核施設への外科攻撃の噂もあったが、その後、イラク戦争に埋没し、6者会談は北に核完成の余裕を与え、今日に至った。実に残念である。
幸い、国連は第7章による決議を行う見通しである。しかし、各国の関心、政策目標が一致するわけではない。米国は、北朝鮮に強い態度をとっている。しかし、核の完成は、米本土にとってはさほど脅威ではない。むしろ、核が拡散することによる中東や米本土への脅威が大きな関心である。しかも、現在はイラクや中東を東アジアよりも優先している。中国に北朝鮮問題を委ねる理由として、ライス長官は「中国は北の核武装を望んでいないから」としたが、どうか。長谷川慶太郎氏は「北京は東京より平壌に近く、中国は核の脅威に耐えられず、北朝鮮に武力で介入する」と指摘するが、その後始末は大変である。
以上の状況で日本は何が出来るのか。日本は独立国として爆撃機も持っていない珍しい国である。国連が第7章に基づく船舶の臨検を決議した場合も、海上自衛隊の日本海への出動は困難である。米軍との協力も十分行えない可能性がある。これで、日米同盟はどうなるか。
筆者は、7月のミサイル連射の後、五味元海将、大串元空将と協力して、日本戦略研究フォーラムから政策提言をした。「ミサイル抑止には、防衛システム以上に策源地を攻撃する能力の保有が必要だ」という趣旨である。第1に、現存のF15やF2の航空機に北朝鮮への対地攻撃能力を賦与する。第2に、トマホークや巡航ミサイルを導入する。第3に情報を整備する、である。いずれも米軍の協力が必要だが、筆者はマイヤーズ元統合参謀本部議長に質問し、肯定的返答を得た。第4に、このような態勢の整備には予算措置が必要であるが、現在、防衛庁の来年度予算には計上されてない。事態は核実験へと発展している。ミサイル防衛の前倒しへの予算措置が議論されているが、攻撃能力の保有は必須のものであり、早急な予算措置を要求する。
北朝鮮は核といい、拉致といい、日本人の安全保障意識を高めるのに、反面教師の役割をしているのは皮肉だが、北の核実験は改めて、憲法9条が新しい事態に適応していないことを示している。議長国として纏める国連決議にも効果的に参加できないようでは、国際的信用を失い、国連安保理常任理事国はおろか、21世紀のアジアの荒波を生存できない。目の前の危機には取りあえず、憲法を越えた解釈で応じなければならないが、憲法改正が改めて、緊急・必須の政策課題として浮かび上がっている。
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