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2012-04-23 06:51
「小沢無罪」なら政局を直撃:4月26日に判決
杉浦 正章
政治評論家
26日の小沢裁判の行方ほど政局の動向に影響を与える例を知らない。ロッキード事件の田中判決は中曽根政権を揺さぶったが、今回のように政局に直接影響を与えたものではない。判決の最大のポイントは「推認有罪」があり得るかどうかかである。無罪ならば、小沢が政局の場に躍り出ることは確実だ。小沢は既に無罪を獲得したかのように怪気炎を上げているが、側近には「推認があるから油断できない」と不安を隠していない。東京地裁裁判長・大善文男は「有罪」に持ち込めば、大向こうからやんやの喝采を受けるが、裁判における「推認」の是非が秘書の有罪判決のケースと同様に問われることになる。「無罪」になったときはどうなるかだが、まず、野田内閣最大の課題の消費増税、原発再稼働を直撃する。小沢はただひたすら解散・総選挙だけを意識して2つの問題に反対しており、「政策」を「政局」の具にするという「邪道」がまかり通ることになりかねない。小沢は消費税法案について4月18日、「僕は消費増税法案の採決まで野田政権はたどり着けないと思う。増税一本という姿勢は、決して国民の支持を得られないし、内閣支持率が20%を切るような状況になったら、党内外がもたない」と述べて、審議未了の継続審議となる見通しを明らかにしている。
「たどりつけない」というのは「たどりつかせない」という宣言に等しい。次第に「親小沢」の本性を露骨に見せ始めた幹事長・輿石東は、小沢の意を受けて継続審議に向けて動いており、同法案の帰趨に大きな影響を及ぼすことになる。問責2閣僚の更迭についても、輿石は消費税法案の審議遅延策の一環として“活用”して、反対し続けるだろう。原発再稼働についても小沢は、「地元や国民全体の納得がいく説明や対策の話がされないうちに、再稼働だけが政治的に決められた」と真っ向から野田を批判している。さらに党内的には、小沢グループとこれを支援する鳩山グループが勢いづく。天下の愚人・鳩山由紀夫も、ますますボルテージを上げるだろう。輿石は、小沢が無罪ならば、党員資格停止処分を撤回する方針を明らかにしている。輿石は「無罪即政権復帰」で動く構えだ。しかし、副総理・岡田克也や政調会長・前原誠司など反小沢勢力も黙ってはいまい。前原はテレビで「不服を持つ側が控訴するかもしれない。そうすると裁判が確定しない。だから、まだ不確定な要素が大きい」と発言した。たしかに控訴で裁判が継続した場合、小沢復権の根拠が消滅する。というのも、昨年2月22日の民主党常任幹事会における小沢処分決定は「当該事件の判決確定までの党員資格停止処分とする」となっており、どう読んでも最高裁での判決まで資格停止処分は継続することになっている。もちろん小沢グループは、これに反発して、復権の是非が党内抗争に発展する可能性は高い。
小沢は、表向きは裁判勝利を前提にしたように、はやりにはやる姿を見せている。党員資格の回復は当然のこととして、代表選にまで出馬する構えだ。18日のテレビで代表選出馬について「それが天命だとすれば、私はどんな役割でもするつもりだ。最後のご奉公をしたい」と、当たるベからざる勢いだ。しかし、一連の小沢の発言がなぜか空しい感じがするのは、筆者だけだろうか。まだ判決が出てもいないのに事実上の勝利宣言は、「裏」があるような気がする。「裏」とは、有罪の判決であった場合に備えて、「無罪が常識なのに有罪とした」ことで裁判官批判の反撃をする下地作りをしているような気がするのだ。場合によっては、グループの議員を動員して国会で大善を訴追する動きをすることまで考えているのかも知れない。小沢は冒頭述べたように「推認があるから油断できない」と漏らしている。事実、小沢裁判のすべての焦点は「推認有罪」か否かの一点に絞られる。秘書の裁判で状況証拠によって、秘書3人を有罪とした東京地裁裁判長・登石郁朗の判決は、推定無罪の原則を覆す常識破りの推認判決であった。
推認に推認を重ね「ミスター推認」と呼ばれた。今回のケースも酷似している。小沢裁判のケースは元秘書・石川知裕が事情聴取で、密かに検事とのやりとりを収録、検事の「捜査報告書」の虚偽記載が証明されてしまったことが影響した。大善は供述調書について「取り調べ方法が違法、不当で、許容できない」などとして、証拠採用を却下した。検事役の弁護士らは共謀立証の主柱を失ったのである。これが小沢サイドの「無罪」説の根拠だ。しかし、まさか大善からの情報に基づいているわけはない。大善が賢明であれば、巨額のカネの処理が秘書の独断で出来るわけがないという常識に立ち戻って、有罪判決を下すだろう。まさに「推認判決」だ。これは結果的に消費増税、原発再稼働という国家百年の大計に欠かせないプラス効果をもたらすことになる。歴史に残る「大岡さばき」として、万雷の拍手で迎えられるに違いない。法曹界や小沢の反発などは、坊主のお経と思えばよい。小沢が裁判官訴追など狙っても、出来るわけがない。有罪判決の政界に与える影響は簡単だ。小沢の勢力は崩壊過程に入る。有罪にせよ、無罪にせよ、首相・野田佳彦が「小沢切り」を迫られる構図は変わらない。
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