ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
2012-05-14 13:46
民主主義のお手本となるか-混迷するギリシャ政治
川上 高司
拓殖大学教授
5月6日ギリシャでは総選挙が行われ、伝統的な2大政党が国民から厳しい「ノー」をつきつけられてその権威を失墜した。この2大政党は国家の再建のためにギリシャにとって厳しい緊縮財政を掲げていた。出来る限り支出を切り詰めて破綻寸前のギリシャを立て直そうというのである。昨年11月にギリシャ危機が世界を不安に陥れた時、当時のパパレンドゥ首相は、緊縮財政の是非を国民に問うと発言して世界を慌てさせ結局国民投票は見送られパパレンドゥ首相は辞任した。
だが今回の選挙ではまさに緊縮財政に関して民意を問う形となり、ギリシャ国民はきっぱりと「ノー」と言ったのである。国を救済することが必要なのはわかっている。だが緊縮というやり方では嫌だ。しかも厳粛すぎるドイツ的なやり方は受け入れられない。われわれにはわれわれのやり方がある。そうギリシャ国民は主張しているのである。
この選挙の結果ギリシャでは緊縮財政の実施が困難になり厳しい規律によって財政を健全化させるというドイツの思惑は頓挫する可能性がある。そうなればドイツのユーロ圏での指導力にも影響がでるかもしれない。時を同じくしてフランスでも大統領選挙があり、緊縮財政を掲げた現職のサルコジ氏がオランド候補に敗北した。オランド候補は緊縮よりも雇用の促進など経済成長によって財政の立て直しを図ることを掲げている。
フランス国民もまたドイツ的な緊縮財政に「ノー」をつきつけてドイツの主導権に待ったをかけた。フランスはフランスであってドイツでないということだろう。ユーロにまつわる財政問題、経済問題にはギリシャ、フランス、スペイン、イタリアなどの南欧諸国とドイツに代表される北部の諸国の対立という根深い構造が横たわっていることが一層鮮明になり、問われているのは「民主主義」のあり方なのである。
>>>この投稿にコメントする
修正する
投稿履歴
一覧へ戻る
総論稿数:5546本
公益財団法人
日本国際フォーラム