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2012-05-21 06:49
会期内衆院通過が消費税政局の焦点
杉浦 正章
政治評論家
最近は見通しのよい記事や評論にはとんとお目にかからない。大胆な見通しを立てれば恥をかくと、マスコミが事なかれ主義で萎縮をしているように見える。政局と呼吸を合わせていれば、ある程度は読み解くことができるものなのだが、それをしようとしない。特別委でようやく野党質問が始まる今日(5月21日)で残る会期は1か月となる。シュミレーションすれば、首相・野田佳彦が野党の攻勢、元代表・小沢一郎の“放逸邪険”を振り切って、消費増税法案を6月21日の会期切れまでに成立を図ることはまず絶望的という流れだろう。消費増税法案は他の重要案件ともつれたまま延長国会に先送りとなる流れだ。そこでシュミレーションだが民主党国対が期待しているように、6月4日の週までに特別委員会の審議が100時間に達して、同月半ばまでにどうにか衆院を通過させても、残る1週間で参院に送付して会期内成立を図れるのかだ。参院は馬鹿にするなとストライキを起こす。連日10時間も審議して、途中でハプニングが起きずに、野田が自民党の言うことをすべて聞き入れれば、話は別だ。「聞き入れよ」と言っているポイントは明瞭だ。まず問責閣僚を更迭し内閣を改造する。
次に、民主党マニフェスト崩壊にけじめをつける解散を確約する。もともと不可能な「国民すべてに7万円の年金を支給する最低保障年金制度」創設を撤回する。定数をとりあえず「0増5減」で処理する。これらはすべて「小沢切り」につながってくる流れであり、野田が要求を飲めば、ことは一挙に解決する。逆転会期内法案成立も夢ではないが、ラクダを針の穴に通すのと同じくらい難しい。しかし、野田が踏み切れば、民主党内は白兵戦の段階に突入する。小沢は“野田203高地”を目指して突撃を繰り返し、野田陣営と肉弾相打つ戦いとなり、死屍累累、民主党はボロボロとなる。したがって、野田は、ぎりぎりの段階で結局妥協はするにしても、現段階での自民党の主張を受け入れることは難しい。一定の時間をかける動きに出るに違いない。そこでシュミレーションは会期末までに消費増税法案の衆院通過を図れるかどうかが勝負となる。会期末までに衆院を通過した場合、会期延長への説得材料ができるわけであり、野田は会期を延長して激突をそらして、時間をかけた対応が可能となる。もちろん会期末までに衆院も通らない可能性はあり、その場合も野田は解散・総選挙か会期延長かの決断を迫られることになる。
会期末までに衆院を通らないということが、何を意味するかだが、自民党が全く攻勢一点張りであるということを物語る。自民党は、野田が求める小沢との会談が実現するかどうか、実現した場合小沢が妥協するかどうか、小沢が妥協しなかった場合、野田が「小沢切り」に踏み切るかどうか、を見ているのだ。その経過を見ながら、衆院への内閣不信任案、参院への首相問責決議案上程の機をうかがうことになる。同党幹事長・石原伸晃は20日、「野田総理大臣が小沢氏と会って、『消費税は、党が分裂するので、通常国会ではなく、党の代表選挙が終わってからにしよう』となれば、野田内閣はもたない。野党として重大な決意を持って対処する」と早くも決議案提出の“脅し”をかけている。公明党は消費税反対の立場から消費増税法案を廃案に追い込み、解散・総選挙を実現するのが基本戦略だから、自民党の強硬戦略に手を貸し続けるだろう。会期内に両決議案上程となれば、政局は直ちに行き詰まることになる。
この自民党の問答無用、政局一点張りの国会戦略には、マスコミが待ったをかける。とりわけ参院執行部のなりふり構わぬ突出ぶりには、批判が強い。自民党が衆院も通過させずに解散・総選挙だけを目指すならば、批判の矛先は自民党総裁・谷垣禎一に向かうだろう。谷垣は、石原と明らかに申し合わせた表現で「野田首相が、小沢氏や輿石氏と話をして『採決を先送りしよう』と判断することはありうる。しかし、これは決まらない政治を推し進めるだけで、首相が立ち腐れる道だ」と野田“立ち腐れ”論を展開した。谷垣にも、会期末には不信任・問責決議案で、解散を勝ち取る戦略も見え隠れする。しかし、自民党内には消費増税法案反対論は少数派であり、むしろ賛成論が長老を中心に台頭してきている。谷垣が参院の強硬路線だけに乗っていれば、「立ち腐れ」は自分であることが分かっていない。いくら早期解散を目指すといっても、谷垣は少なくとも衆院を法案が通過していない段階で、野党の伝家の宝刀である不信任・問責決議案上程は避けるべきであろう。民主党政権をひっくり返しても、消費増税法案は残って、たとえ自民党政権になっても、最初から祟(たた)り続けることは目に見えている。いずれにしても、処理せざるを得ないのだ。谷垣は野田との党首会談について20日のテレビで「最後にどこかの時点で総理と話し合わなければならないことになる」と述べており、やはり延長国会での「話し合い解散」を目指そうというのが“本音”なのかもしれない。
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