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2006-10-18 12:40
核実験後の北朝鮮の行方を読む
鵜野公郎
慶應義塾大学名誉教授
国際社会は北朝鮮の核実験に対する厳しい態度で歩調を合わせることができた。北朝鮮は次のうちどちらを選ぶであろうか。(A)制裁による打撃を避けるため協調に転じるのか、あるいは(B)小国が国際社会で生き延びるためミサイルと核で交渉力を確保することを狙うのか。
これに対して韓国は(A)北の軍事力強化に懸念を深め融和策から転換する、(B)北のミサイルや核は南に向けられたものではないと信じて同一民族であることを基本とした政策を継続する、のいずれかを選択せざるを得ない。
中国は北朝鮮と陸続きであり朝鮮半島の非核化が自国の安定につながると考えるであろうが、そのためには(A)共産主義イデオロギーを共有する北を支援することで影響力を保持する、(B)北に厳しい国際社会にサヤ寄せすることにより、国際社会に対してもひいては北に対しても、今後の中国の発言力を確保する、という方途があろう。
ロシアにとっては(A)北とは国境を接することから地域の安定のため国際協調の途を選ぶ、(B)石油を通じた国際社会への影響力とならんで、自国の政治的影響力を維持強化するため、米国とは異なる立場を取る、という行動が可能であろう。
米国は(A)理想主義の側面から、「ならずもの」北朝鮮を経済的にも軍事的にも直接懲らしめる、(B)現実主義の立場から、さらには石油もないことを考慮して、北の核への対処は国連やIAEAさらには中韓を取り込んで責任を持たせる図式を作ることで軍事的・経済的負担を避けつつ政治的リーダーシップを確保する、という選択肢を有する。
日本としては(A)国際的立場から、北朝鮮の隣国である日本・中国・韓国が役割分担して北を誘導しつつ、米国との同盟関係を背景に北のミサイルと核を放棄させる、あるいは(B)北のミサイルと核が向けられた方向は、中国ではあり得ないし、同一民族の韓国でもなく、ロシアは遠く、米国とは対立しているかの如くであるが交渉相手ではあっても敵対はありえず(第一、ミサイルは届かない)、日本以外にないとすると妥協的立場には立てない、という難しい選択となる。
さてこの(A)(B)のうちどちらが現実になるのか。いずれも(B)がありそうである。その場合、6カ国の立場を組み合わせるとどうなるか。北朝鮮は制裁を持ちこたえることはできない。しかし協調に転ずることもないまま時間が経過し核保有国としての立場が残る。これでは困るので、韓国が経済的に支え、中国が政治的に支えつつ、両者の影響力によって朝鮮半島の非核化を図る。これをロシアが支持し、米国も検証可能な形で核兵器廃棄に至るのであれば中国の国際社会のメンバーとしての制裁参加など責任ある行動を評価し、また北への政治的・経済的影響力を期待して、この図式を支持する、かも知れない。
向かうところは南北の統一である、かも知れない。国連事務総長が韓国出身であることも一つのファクターとなる、かも知れない。「統一」は、ドイツ型の通貨まで統一することは無理であり、連邦制などゆるい形を目指して段階を踏んでおこなわれる、かも知れない。韓国はこの間、北の労働力を徐々に利用していくことができることを考えると、負担ばかりでなく経済的メリットもある。各国の利害は朝鮮半島の非核化で共通しており、非核化は実現するであろうが、それには時間がかかる。当面ミサイルと核は残るであろう。この間、各国に対して日本のとるべき態度には熟慮を要する。
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